「放課後、君の隣で」

数日後。

結衣は自分でも分かるくらい、蓮を目で追うようになっていた。

授業中。
休み時間。
ふとした瞬間に視線を向けてしまう。

そして目が合うたび、蓮は少しだけ優しく笑うのだ。

「……完全に恋してるじゃん」

昼休み、美桜にそう言われて結衣は盛大にむせた。

「ち、違うって!」

「違わないって。顔見れば分かる」

図星すぎて何も言えない。

その時、教室の入り口から女子の声がした。

「蓮くん!」

結衣は反射的にそちらを見る。

他クラスの可愛い女の子だった。

長い髪を巻いていて、明るくて、いかにもモテそうな雰囲気。

「今日、一緒に帰れない?」

周りがざわつく。

結衣の胸もざわついた。

蓮は少し面倒そうにしながら答える。

「約束あるから無理」

「えー、誰と?」

その瞬間。

蓮は迷いなく結衣を見た。

教室中の視線が一気に集まる。

「……っ!?」

結衣の顔が熱くなる。

女子は驚いた顔をしたあと、無理やり笑った。

「そっか。邪魔してごめんね」

そう言って去っていく。

教室は小さな騒ぎになった。

「え、なにあれ」

「神谷くんと春川さんって付き合ってるの?」

「やば……」

ひそひそ声が聞こえる。

結衣は恥ずかしくて机に伏せたくなった。

放課後。

いつもの帰り道なのに、今日は妙に緊張する。

「……ごめん」

先に口を開いたのは蓮だった。

「変な注目集まった」

「う、ううん……」

沈黙。

夕焼けの風が髪を揺らす。

結衣は勇気を出して聞いた。

「さっきの子……蓮くんのこと好きなのかな」

すると蓮は即答した。

「興味ない」

その返事に、少しだけ安心してしまう自分がいる。

でも次の瞬間。

「俺が気になるのは一人だけだから」

蓮がぽつりと言った。

心臓が止まりそうになった。

「え……」

聞き返そうとした時。

蓮はふいに結衣の頭へ手を伸ばす。

「葉っぱついてる」

優しく取られただけなのに、顔が熱い。

蓮はそんな結衣を見て、小さく笑った。

「ほんと分かりやすい」

「っ……!」

絶対からかわれてる。

なのに嫌じゃない。

むしろ、もっとその声を聞きたいと思ってしまう。

だけど結衣はまだ知らなかった。

蓮が時々見せる寂しそうな表情の理由を。