「放課後、君の隣で」

付き合い始めて一週間。

——結衣は現在、ものすごく困っていた。

「……無理」

昼休み、机に突っ伏した結衣を見て、美桜が笑う。

「なにが?」

「彼氏いる生活に心臓が慣れない……」

「青春してるねぇ」

だって仕方ない。

朝、教室で「おはよう」って笑われるだけでドキドキするし、帰り道に隣を歩くだけで緊張する。

しかも蓮は付き合ってから少しだけ甘くなった。

前までは距離を取っていたのに、今は自然に頭を撫でてきたりする。

心臓がいくつあっても足りない。

その時、教室の後ろが騒がしくなる。

「神谷くんいる?」

他クラスの女子たちだった。

付き合ったことはまだ一部しか知られていない。

結衣の胸が少しざわつく。

すると蓮は面倒そうに振り返ったあと、まっすぐ結衣のところへ来た。

「結衣、帰り購買寄る?」

「え?」

突然名前を呼ばれて固まる。

周りが静まり返った。

蓮は気にせず続ける。

「新作のいちごミルク出てた」

覚えてる。

結衣が好きなの。

「……行く」

小さく答えると、蓮は満足そうに笑った。

その瞬間。

教室がざわついた。

「え、名前呼び!?」

「付き合ってる!?」

結衣は恥ずかしくて顔を隠したくなる。

放課後。

購買でいちごミルクを買った帰り道。

蓮は結衣の手を自然に繋いだ。

「慣れた?」

「……まだ全然」

正直に言うと、蓮は少し笑う。

「俺も」

「え?」

「好きなやつが隣いると普通に無理」

その破壊力に、結衣は立ち止まった。

「蓮くん、最近ずるい……」

「好きだから仕方ない」

さらっと言われてしまう。

夕焼けが街を赤く染める。

放課後。

あの日から始まった恋は、今も少しずつ続いている。

隣を歩く温もりが、何より愛しかった。