「放課後、君の隣で」

文化祭当日。

教室は朝から大騒ぎだった。

「結衣かわいー!」

メイド風の制服を着せられ、結衣は顔を真っ赤にする。

すると後ろからクラスメイトの悲鳴が聞こえた。

「神谷くんやば……!」

振り向くと、黒シャツ姿の蓮が立っていた。

いつもより大人っぽくて、結衣は一瞬息を止める。

その瞬間、蓮も結衣を見て固まった。

「……似合ってる」

低い声。

たったそれだけなのに、胸がいっぱいになる。

文化祭は大盛況だった。

でも結衣はずっと、蓮のことを意識してしまう。

目が合うだけで嬉しくて、近づくだけで苦しい。

——好き。

もう認めるしかなかった。

閉会後。

約束通り、ふたりで文化祭を回る。

夜の校舎は昼とは違って静かだった。

屋上へ続く階段に座りながら、結衣は小さく笑う。

「楽しかったね」

「あぁ」

優しい沈黙。

夜風がふたりの髪を揺らす。

すると蓮が静かに口を開いた。

「結衣」

また名前。

呼ばれるたび、心が熱くなる。

蓮は真っ直ぐ結衣を見つめた。

「俺、お前のこと好き」

頭が真っ白になる。

「最初は放っておけないだけだと思ってた。でも気づいたら、ずっと目で追ってた」

真剣な声だった。

「お前といると楽しいし、安心する」

蓮が少しだけ苦しそうに笑う。

「だから、隣にいてほしい」

結衣の目に涙が滲む。

嬉しくて、苦しくて、胸がいっぱいだった。

「……私も」

声が震える。

「私も、蓮くんが好き」

その瞬間、蓮は安心したように目を細めた。

次の瞬間。

そっと抱きしめられる。

「っ……」

胸の音が聞こえてしまいそうだった。

「やばい、今めちゃくちゃ嬉しい」

耳元でそう囁かれて、結衣はさらに顔を赤くする。

夜空には星が浮かんでいた。

放課後から始まった恋。

雨の日も、夕焼けも、全部が大切な思い出になる。

蓮が優しく結衣の手を握る。

「これからも一緒に帰ろうな」

結衣は涙混じりに笑った。

「うん」

その笑顔を見て、蓮も笑う。

こうしてふたりの恋は、“放課後”の先へ進み始めた。