クラリスとサリアの卒業パーティー日から約一年後――王太子殿下と公爵令嬢ソフィア様の結婚式が盛大に催された。
式から一カ月。今日は新しい王太子妃の実力を見定めようとする貴族女性たちを集めた、初のお茶会だ。
「……クラリス。準備はいいかしら?」
「もちろんです、妃殿下。私が完璧な仕事でサポートいたします」
「ふふ、さすがね。信頼しているわ」
分刻みのスケジュールを組み、膨大な情報を精査し、最適解を導き出す。今世のクラリスの居場所は、荒波立つ社交界の最前線――王太子妃のすぐ隣だ。
ソフィアがすっと目を細めて立ち上がる。凛とした足取りで会場へ向かうと、朗らかな声を響かせた。
「みなさま、ごきげんよう」
次々と挨拶に訪れる夫人たちへ、クラリスが事前に教えた情報をもとに、ソフィアは淀みなく言葉をかける。隙あらば新王太子妃を揺さぶろうとする女たちを前に、ソフィアは一歩も引かずに堂々と立ち振る舞っていた。
その背中を見守りながら、クラリスは次の「仕事」のために、静かに動き始めた。
***
後日談①サリア
「ねぇ、サリア、あなたも私の専属の文官になりましょうよ。研究開発費を出資してあげるから、好きな商品を自由に私の元でつくったらいいわ」
サリアは男爵家を抜け出し、王太子妃ソフィアが立ち上げた研究施設で新たな商品を次々と開発。運用能力が低いサリアのために、ソフィアの命もあって、クラリスはサリアのマネージャー業務も兼任する。
後日談②ルードヴィク
「ルードヴィク・クロウ様は騎士としての腕はイマイチだけど顔だけはいいから、誰かしらと結婚はできると思うわよ。クラリスやサリア以上の相手との結婚は望めないとは思うけど。あなたたちが気にすることじゃないわ」
ソフィアがそう断言した通り、彼はその見目の良さのおかげで新たな婚約者には困らなかった。選んだのは手をあげた中で最も家格の高い家。だが、ルードヴィクは地味な容姿の令嬢に満足できず、あろうことか浮気を繰り返して婚家から叩き出される。
彼を持て余したクロウ家は最終手段として、とある高齢の有力貴族夫人の愛人としてルードヴィクを差し出した。

