私のかみさま(改訂版)

過去に聞いた言葉が、見た光景が
その時に戻ったかのように
鮮明に、頭の中で響いて、流れる。




……もう、やめて。



全部私が悪いの。



誰も悪くない。



全部、私が。



だから



喧嘩しないで。


怒らないで。


泣かないで。



もうすぐいなくなるから。


ちゃんと消えるから。


もうこれ以上、迷惑かけないから。




だから-…




「―…おい」



…。



私の顔を覗き込む、翡翠色の瞳。



………ああ。


そういえば、この人は見たことのない
とても珍しい目の色をしてる。


すごく、今更だけど


すっかり思案に浸っていた私は
突然の至近距離にも驚くことなく
ただただ、その瞳をぼんやり見つめた。



「顔色悪いぞ。大丈夫か?」

「…はい」



心なしか、心配そうな表情を見せるその人から
距離を取りながら、言葉を返す。

自分でも分かるほど
弱々しく心許ない声だった。


どう見ても大丈夫そうには
見えなかっただろうけど
その人は、それ以上追及はせず


代わりに



「佐奈。手、出せ」

「…手?」

「ああ」



言われるがまま、両手を前に出す。

すると、その人は懐から何かを取り出して
それを私の手のひらの上に落とした。



「駄賃だ」

「…あめと、イヤリング?」



そこに鎮座するのは
カラフルな包装紙に包まれたあめと

見る角度によって色が変わる
不思議な石がはめ込まれた
シンプルなデザインのイヤリング。



「疲れた時は甘いものだろ
後は、ほら。女はそういうの好きだろ?」



……若干、偏見が混ざってる。



「…」



月明かりに反射して、きらきらと光る
傷や汚れの見当たらない、真新しいイヤリング。

……多分、新品。



……私のために
わざわざ用意してくれたのかな。