気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -



5月2日。

ゴールデンウィーク初日、帰省の日。

キャリーケースを持って、1階に降りる。


「そっか、茉桜今日帰省か」

「はい!」

「柊弥さんは?」

「俺は明後日と明明後日だけ実家に帰るよ、希遥は?」

「私も今日!けど出発午後なんだよね」


どうやら、想くん以外はゴールデンウィーク中、少しだけ家を空けるみたい。


「私は4日に帰ってきます」

「気を付けて〜」


希遥さんがひらひら手を振る。

柊弥さんも、「楽しんでおいで」って笑ってくれた。

その隣で。

想くんはいつも通り、コーヒーを飲んでいる。

一言も喋らない。

何を考えているんだろう。

こういう話、嫌だったかな。

実家とか、帰省とか。

この前、『帰る理由、ないし』って言っていたことを思い出す。

あれ以上聞かなかった。

聞けなかった。

でも。

今日、私たちが家を空けて、想くんは一人になる。

そう思うと、なんだか少しだけ気になった。


「それじゃあ、いってきます!」


キャリーケースを引きながら言う。


「いってらっしゃい!」

柊弥さん。


「お土産よろしく」

希遥さん。

そして。


「……いってらっしゃい」


想くん。

顔は上げない。

でも、ちゃんと聞こえた。

私は少しだけ笑って、


「うん、いってきます」

そう返して、桜ノ木ハウスを出た。