気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -



「うわっ!」

「きゃっ!」

「危な」


朝7時。


洗面所前。

歯ブラシを咥えたまま振り返った私は、後ろから出てきた想くんとぶつかりそうになった。


「びっくりした〜!」

「朝からうるさい」


むすっとしながら歯を磨く。

桜ノ木ハウスの朝は早い。

希遥さんは8時から授業。

柊弥さんはゼミ。

私は1限。

想くんは……、今日はバイトだったかな。


つまり。

洗面所。

トイレ。

キッチン。

つまり、全部混む。


引っ越してから1週間。

少しずつ、この家の生活リズムが分かってきた。


想くんは、朝が強い。

私より早く起きていることが多いけど、無口だからいるのかいないのか分からない。


柊弥さんは、私と似た生活リズム。

朝ごはんを食べながらニュースを見るのが日課らしい。


希遥さんは――

「あと5分……」

と言いながら、

毎朝ギリギリに起きてくる。

なのに。

「間に合う間に合う!」

本当に間に合うからすごい。


「茉桜、ドライヤー貸して〜」

「どうぞ!」


希遥さんが私の後ろから手を伸ばす。

その瞬間。


「熱っ!」

「きゃ!」

「危な!」


コードが足に引っかかり、ドライヤーが飛ぶ。

落ちる――

と思った瞬間。


ガシッ。


想くんが片手でキャッチした。


「…………」

「…………」

「危なすぎ」

「す、すみません……」


希遥さんが吹き出す。


「想、茉桜ちゃんの保護者じゃん」

「違う」

「先週も本棚作ってあげてたし」

「違う」

「優しい〜」

「違う」


全部否定。

なんなんだ、この人。

優しいのか冷たいのか、

ほんとによく分からない。