気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -



奈瑠と話を終え、教室へ戻る。

さっきよりも視線が増えた気がした。


「……気にしない」


自分に言い聞かせながら席へ座る。

すると。

教室の前が急にざわついた。


「西澤くんじゃない?」

「建築の人だよね」

「え、本当に来た」


何事かと思って顔を上げる。

教室の入口には、想くんと逸晟くんが立っていた。

想くんは周りの視線なんて気にする様子もなく、真っすぐこちらへ歩いてくる。


「え……」


私の席の前で立ち止まると、手に持っていたノートを机へ置いた。


「昨日、お前の」

「あ」


昨日、帰り道で想くんに預けた講義ノートだった。


「ありがとう」

「……ん」


短く返事をして、そのまま踵を返す。

その背中を見送った瞬間。


「きゃー!」


教室のあちこちから小さな悲鳴が上がった。


「今の見た?」

「普通に教室まで来たよね」

「やっぱ付き合ってるんじゃん」

「違っ……!」


慌てて立ち上がる。

でも、その声はもう誰にも届かない。

廊下へ出た想くんも、すれ違う学生たちから何か話しかけられているのが見えた。

きっと、向こうも同じなんだ。

そう思うと、少しだけ申し訳なくなる。


「茉桜」


奈瑠が苦笑いを浮かべた。


「これはもう、しばらく噂なくならないね」


「……だよね」


私は机へ突っ伏した。


「どうしよう……」


頭を抱える私とは反対に、教室の空気はいつも以上に賑やかだった。