気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -



大学へ着いた瞬間から、いつもと空気が違う。

すれ違う学生が、ちらりとこちらを見る。


「……気のせいか」


そう思いながら教室へ入ると、


「想!」


逸晟が勢いよく駆け寄ってきた。


「え、何?」

「昨日!」

「昨日?」

「お前ついに茉桜ちゃんに告白した!?」

「…………は?」


頭が真っ白になる。


「な、なんで?」

「おい、まじなのかよ。もう結構広まってるぞ?」

「いや、それは!」


周りにいた学生もこちらを見る。


「教育学部の真田茉桜ちゃんでしょ?」

「昨日、校門の前で見たって」

「手繋いで歩いてたって聞いた」

「真田さん可愛いもんな〜」


次々と聞こえてくる声。

俺は思わず机に突っ伏した。


「……終わった」


逸晟は目を丸くする。


「え、違うの?」

「…違う」


小声で事情を話し始める。

茉桜の元彼がまた来ていたこと。

しつこく話しかけられていたところに、俺が現れたこと。


「えぇ……」


逸晟は呆れたようにため息をつく。


「それは勘違いされるって」

「…だよな」

「でも」


逸晟が少し笑う。


「想、助けたんだ」

「……うん」

「しかも付き合ってるって?」

「……」

「想、言うじゃん」

「いや、あれは!」


そう否定したのに。

なぜか昨日のことを思い出してしまう。

『荷物持つ』

『分かってる』

『付き合ってる』

『行くぞ』

普段はあんなこと絶対言わない。


「……」

「想、そのまま付き合っちゃえば?」

「……は?」

「茉桜ちゃんのこと、好きなんだろ?」