気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -



建築学科の課題でもあったのか、肩にはいつもの黒いリュック。

手には模型の入ったケースを持っている。

想くんは私と湊都を交互に見て、ゆっくりとこちらへ歩いてきた。


「……何してる」


短い一言。

その声はいつも通り落ち着いている。

でも、どこか空気が張りつめた。

湊都は想くんを見ると、小さく笑った。


「久しぶり」

「……」

「学祭以来だよね」


想くんは返事をしない。

ただ、私の表情を一度だけ見た。


「茉桜帰るぞ」


それだけ言って、私の隣に並ぶ。


「え……」

「荷物持つ」


私の手からトートバッグを自然に受け取る。


「じゃ」


歩き出そうとした、その時だった。


「相変わらず仲いいね」


湊都が後ろから笑う。


「シェアハウス、まだ続いてるんだ」


想くんの足が止まる。


「ここまで迎えに来るなんてさ」


その言葉に、私は首を振った。


「違うの」

「偶然会っただけ」


慌ててそう言うと、想くんは小さく「分かってる」とだけ返した。

その一言に、少しだけ張っていた気持ちが緩む。


「へぇ」


湊都は面白そうに笑う。


「そんなに信用してるんだ」

「……」

「でもさ」


少しだけ口角を上げる。


「毎日一緒に住んでたら、好きになったりするもんじゃない?」


空気がぴんと張りつめる。

私は思わず息をのんだ。

想くんは何も言わない。

けれど、その横顔から表情だけがすっと消えた。