気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -




自分でも驚くくらい、声が冷たくなった。

湊都はそんな私の反応を見て、少し寂しそうに笑う。


「そんな顔するんだ」

「……」

「昔は、俺のこと見ただけで笑ってたのに」


その言葉に、胸の奥が少し痛んだ。

昔。

その言葉だけで、楽しかった時間も思い出してしまう。

でも。

それと同じくらい、あの日のことも思い出す。


「湊都」

「何?」

「もう、昔の話でしょ」

「……」

「私たちはもう終わってる」


そう言うと、湊都の表情が少しだけ曇った。


「俺は終わったと思ってない」

「……え?」

「俺、まだ茉桜のこと好きだから」


突然の言葉に、息が止まる。


「……今さら?」

「今さらじゃない」


湊都は真剣な顔をする。


「ずっと考えてた」

「俺、間違ってたって」

「茉桜がいなくなってから分かった」


その言葉を聞いても、心は動かなかった。

昔なら。

きっと嬉しかった。

待っていた言葉だったかもしれない。

でも、今は違う。


「湊都」

「ん?」

「それって」


私はゆっくり言葉を選ぶ。


「私が好きだからじゃなくて、失ってから惜しくなっただけじゃないの?」


一瞬。

湊都の顔から笑顔が消える。


「違う」

「じゃあ、どうしてあの時じゃなかったの?」

「……」

「私が一番辛い時じゃなくて」

「別の人とうまくいかなくなった後なの?」

「茉桜」

「ごめん」


私は一歩下がる。


「もう、その言葉を信じられない」


湊都は何か言おうと口を開く。

でも。

その瞬間。


「……茉桜?」


聞き慣れた声がした。

振り返る。

そこには、少し離れた場所に立つ想くんがいた。