気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -



講義終わり。

奈瑠はサークル、希遥はゼミで、私は珍しく1人。


「じゃあまた明日!」

「うん、またね」


1人で校門を出る。

(今日は……いないよね)

無意識に周りを見渡してしまう。

見当たらない。

少し安心して歩き出した、その時。


「茉桜」


後ろから名前を呼ばれる。

体がぴたりと止まる。

聞き覚えのある声。

振り返らなくても分かった。


「……湊都」

「久しぶり」

「……」

「ちょっと話せる?」

「ごめん、急いでるから」


そのまま歩こうとする。

でも。

湊都も歩幅を合わせて隣へ並ぶ。


「5分だけ」

「話すことない」

「あるよ」

「私はない」


歩く速度を少し速める。

それでも湊都は離れない。

周りには学生がいる。

だから大丈夫。

そう思うのに、胸の鼓動だけがどんどん速くなる。


「まだ怒ってる?」

「怒ってない」

「じゃあ何で逃げるの?」

「逃げてない」

「なら立ち止まってよ」

「……」


立ち止まりたくない。

一度止まったら、またあの日みたいに復縁の話をされる気がした。

私はそのまま前だけを見て歩き続ける。

すると。


「茉桜」


湊都が道を塞ぐように一歩前へ回り込んだ。

思わず足が止まった。


「……何?」