気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -



「結ぶ?」


想くんがおみくじ掛けの方を見ながら聞く。


「どうしようかな」


私は手の中のおみくじを見つめる。


「大吉って結ばない方がいいって聞いたことあるんだけど……」

「持って帰る人もいるらしいな」

「想くんは?」

「結ぶ」

「末吉だから?」

「別に」


相変わらず短い返事に、思わず笑ってしまう。

2人でおみくじ掛けの前へ向かう。

細い縄には、たくさんのおみくじが結ばれていて、白い紙が風に揺れていた。


「高いなぁ……」


私が背伸びをして手を伸ばく。

あと少し。

届きそうで届かない。


「んー……」


もう一度背伸びをするけれど、うまく結べない。

その様子を見ていた想くんが、小さくため息をついた。


「貸して」

「え?」

「結ぶ」

「でも、自分で──」

「いいから」


そう言って私の手からおみくじを受け取る。

器用な手つきでひと結び。

するすると紙を結び終えると、軽く引っ張ってほどけないことを確かめた。


「はい」

「……ありがとう」


おみくじを見上げる。

白い紙は風に揺れながら、ほかのおみくじと一緒に静かに並んでいた。


「想くんのも結ばないの?」

「ああ」


想くんは自分のおみくじも同じ場所へ結ぶ。

2枚の白い紙が、すぐ隣で風に揺れた。


「今年もいい年になるといいね」


私が何気なく言うと、


「なるだろ」


想くんは迷いなく答えた。


「なんでそんなに言い切れるの?」

「……さあ」


少しだけ口元を緩めて歩き出す。

その横顔を見ながら、私は小さく笑った。

おみくじの言葉なんて、気にしすぎかもしれない。

それでも。

“身近な人との縁を大切に”

その一文だけは、不思議なくらい心に残っていた。