気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -



「せーの」


ほとんど同時に、おみくじ箱へ手を入れる。

私は1枚引き抜くと、わくわくしながら紙を開いた。


「……あっ!」


思わず声が漏れる。


「大吉!」

「よかったじゃん」


想くんはちらりとこちらを見るだけで、自分のおみくじを開く。


「想くんは?」

「普通」

「普通って何?」

「……末吉」

「えー!見せて!」

「嫌」

「いいじゃん」

「嫌」


そう言いながら、おみくじを半分に折ってコートのポケットへしまおうとした、その時だった。

ふわっ。

冷たい風が境内を吹き抜ける。


「あ」


手元から紙が滑り落ちた。


「あっ、待って!」


私は慌てて手を伸ばく。

石畳の上へ落ちる前に、何とか指先でつかんだ。


「はい」


そう言って返そうとした瞬間。

視界に、ほんの一部分だけ文字が飛び込んでくる。


『恋愛 身近な――』

「あ」


慌てて目を逸らす。


「ご、ごめん!」


私はすぐに紙を閉じ、そのまま想くんへ差し出した。


「見ようと思ったんじゃなくて……」


想くんはおみくじを受け取ると、小さく息をつく。


「別に」

「でも……」

「一瞬だろ」

「……うん」

「気にしてない」


そう言って再びポケットへしまう。

私は自分のおみくじへ目を落とした。

さっき嬉しくて開いたままになっている。

何気なく『恋愛』の欄を見る。

その瞬間。



『身近な人との縁を大切にせよ。焦らずとも、想いは自然と形になる』



「……え」


思わず声が漏れた。


「どうした?」

「な、何でもない!」


慌てて紙を閉じる。

顔が熱い。

身近な人。

そんな言葉が、頭の中で何度も繰り返される。

もちろん、ただのおみくじだ。

なのに。

どうしてか、さっき一瞬だけ見えてしまった想くんのおみくじの言葉と重なってしまって。

私はそのまま、おみくじをぎゅっと握りしめた。