気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -



10月最後の土曜日。

朝から雲ひとつない青空が広がっていた。

学園祭当日。

まだ午前8時だというのに、大学はすでにいつも以上の活気に包まれている。

模擬店の準備をする人。

ステージの音響チェックをする人。

看板を運ぶ人。

あちこちから笑い声や掛け声が聞こえてきて、キャンパス全体がお祭りみたいだった。


「茉桜!フルーツ届いたよ!」

「今行く!」


私は急いでテントへ向かう。

段ボールいっぱいに入った、いちご、ぶどう、みかん、パイナップル。

昨日みんなで下準備をしたフルーツがきれいに並んでいた。


「飴液もう少しでできるよー!」

「串お願い!」

「看板外に出しちゃおう!」


次から次へと飛んでくる声。

気付けば自然と体が動いていた。


「茉桜、その看板お願い!」

「はーい!」


大きな看板を持ち上げる。

……今日はちゃんと前が見える。

思わず少しだけ笑ってしまった。


「何笑ってるの?」


奈瑠が不思議そうに首を傾げる。


「ううん、なんでもない」


この前、看板を運ぼうとして転びそうになったことを思い出しただけ。


「茉桜ー!」

「今行く!」


また呼ばれて、小走りでテントへ戻る。

開場まで、あと30分。

忙しい。

でも、それ以上に楽しい。

みんなで何週間も準備してきた学園祭が、いよいよ始まろうとしていた。