翌朝、6時前。
この家で迎える初めての朝だ。
いつもならもう少し寝ている時間なのに、慣れない環境のせいか目が覚めてしまった。
みんなはまだ寝ているだろうか。
静かに部屋を出て、足音を忍ばせながら階段を下りる。
「……わっ!?」
思わず声が漏れた。
共有スペースには誰もいないと思っていたのに、コーヒーメーカーの前に人影があったからだ。
「……朝からうるさ」
振り返ったのは西澤想くん。
寝癖のついた髪のまま、眠そうな顔でこちらを見ている。
「びっくりした……」
「それこっちのセリフ」
相変わらず愛想はない。
昨日も思ったけれど、この人は本当に口数が少ないらしい。
気まずい沈黙が流れる。
すると、想くんがコーヒーカップを手にしたまま口を開いた。
「……寝れた?」
「え?」
「眠れたかって聞いてんの」
「あ、うん。ちょっと早起きしちゃったけど」
「あっそ」
それだけ。
自分で聞いておいて、その反応はどうなの。
少しだけ呆れる。
でも、不思議と嫌な気分にはならなかった。
昨日はほとんど話もしなかったのに、今日はちゃんと会話になっている。
……会話と呼べるほどでもないかもしれないけれど。
想くんはブラックコーヒーを一口飲んだ。
「苦くないの?」
思わず聞くと、
「お前の飲み物の方が甘すぎ」
と即答される。
やっぱり感じ悪い。
だけど、昨日より少しだけ。
本当に少しだけだけど。
この人が分からなくて、気になった。
