真昼の星空

智也は、しばらく言葉を探すように沈黙してから、ゆっくりと口を開いた。

「……自分が三年以上かかってもできなかったことを」

視線を上げる。

「付き合い始めたばかりのあなたが、どうしてできているのか」

静かに、しかしはっきりと。

「どうしても知りたくて」

雅人は、その視線を受け止めたまま問い返す。

「でもあなた、今お付き合いしてる人、いますよね」

少しだけ間を置く。

「それなのに、どうして」

智也は一度目を伏せ、苦く笑った。

小さく息を吐く。

「あの……陽の笑顔を見るまでは」

言葉がわずかに揺れる。

「今の恋人と、ちゃんとやっていこうと思ってたんです」

視線が揺れ、すぐに戻る。

「でも、どうしても気になってしまって」

指先がわずかに動く。

「陽に連絡もしました。何度か」

自嘲気味に笑う。

「1回、より戻そうって言って以来無視されてますけど。」

短く間を置く。

「……当たり前ですよね」

顔を上げる。

「それで、あなたの姿を見つけて」

声が少しだけ低くなる。

「いてもたってもいられなくて」

そのまま、言葉を置いた。

今度は、雅人がゆっくりと口を開いた。

「ようちゃんとは、大学の頃から付き合っていて……一度、別れました」

視線は逸らさず、そのまま続ける。

「三か月前に偶然再会して、また付き合うことになりました」

短く間を置く。

「そのときに、前の人と別れたばかりだって聞いています。……あなたのことも」

智也の表情がわずかに揺れる。

「好きな人ができた、って言われたって」

雅人は静かに言葉を重ねる。

「でも、ちゃんとそう言ってくれて、別れてから次に進もうとしてた。……ちゃんとした、いい人だったって」

その一言に、智也は思わず頭を抱えた。

雅人は続ける。

「この前の報道が出たあと、ようちゃんのところに、たくさん連絡が来たんです」

少しだけ、息をつく。

「でも、一つひとつ丁寧に返信してました」

その光景を思い出すように、言葉が柔らかくなる。

「“ちゃんと別れたのは半年前だけど、一年前には関係は終わっていたので大丈夫です。ご心配をおかけして申し訳ありません”って」

静かに続ける。

「時間をかけて、全部」

智也は何も言えない。

「僕は、あなたのこと悪者にすればいいんじゃないかって言ったんですけどね」

少しだけ苦笑する。

「でも、あの人はそうしなかった」

そして、真っ直ぐに見据える。

「あの記事を読んだときも」

言葉に力がこもる。

「自分が浮気されてたことより、あなたが会社で大変なことになるんじゃないかって」

一拍。

「そっちを心配してたんですよ」

店内のざわめきが遠のく。

雅人は静かに、言い切った。

「くだらない嫉妬してないで」

一瞬の沈黙のあと。

「今あなたがするべきことは、今の恋人を大切にすることじゃないんですか?ようちゃんと別れてまで選んだ人を。」

智也は、大きく息を吐いた。

「はぁ……」