真昼の星空

「広瀬さんは?」

視線を合わせる。

貴明が少し恥ずかしそうに笑う。

「僕は、一目惚れ」

グラスを持ったまま目を伏せる。

「ものすごく忙しいときで」

小さく息を吐く。

「恋愛なんてする気もないし」

苦笑する。

「してる時間もなかったのに。好きになっちゃって。」

窓の外の夜景を見る。

「夜中とか、朝方とかしか時間取れないこと多くて。」

「常識的な時間にタイミングが合えば連絡するみたいな感じで。」

晃がすぐ頷く。

「わかります。」

少し笑う。

「好きになっちゃう気持ち」

二人。

顔を見合わせて頷く。

小さく笑う。

貴明が続ける。

「もう一緒に住むしかないと思って、」

視線を落とす。

「同棲しようって言ったんだけど」

晃がすぐ反応する。

「陽さん同棲NGですよね」

貴明が驚く。

「そうなんですよ。」

少し笑う。

「頑なに。」

グラスを持ち直す。

「歯ブラシとスウェットくらいしか」

苦笑する。

「置いとくこと許されなくて」

晃も笑う。

「そうそう!」

懐かしそうな顔。

「僕の前に付き合ってた人と別れる時大変だったからって、」

「同棲はしないって。」

少し笑う。

「別れる前提なんですけど」

二人少し笑う。

貴明が言う。

「そうなんですか。」

少し考える顔。

「僕はあんまり過去のこと話してなくて、」

静かな声。

「知りませんでした。」

バーの静かな空気の中。

同じ人を好きだった男たちの会話が。

ゆっくりと続いていた。

バーの奥の席。

夜景がガラス越しに揺れている。

貴明が静かに話し始める。

「同棲がダメならって」

少し間。

「プロポーズしました」

晃が目を見開く。

「え?」

貴明が苦笑する。

「断られましたけど。」

グラスを持ち上げる。

「そのまま別れることになって。」

視線を落とす。

「でも忘れられなくて、」

小さく息を吐く。

「もう1回付き合ってくれって言いました。」

指先に力が入る。

「その時…」

少し止まる。

「必死過ぎて、酷いこと言ってしまって。」

静かな声。

「完全に終わりました。」

晃が静かに聞いている。

「そうだったんですね…」

少し考えてから言う。

「陽さん、僕と付き合う前の人が外国行っちゃって、」

記憶を辿るような声。

「その人と10年振りに再会して」

貴明の目が少し動く。

「また付き合う事になったらしいです。」

短く続ける。

「さっきの電話で聞きました。」

貴明が小さく頷く。

「そっか…」

静かな声。

晃が続ける。

「彼氏に悪いからもう電話しないでねって言ってました。」

貴明がグラスを見つめる。

「陽が幸せならよかった」

短い言葉。

晃が聞く。

「陽さんのインスタ知ってます?」

「え?知らないです」

即答。

「教えるんで見てみてください。」

スマートフォンを取り出す。

「凄い人気だから」

少しいたずらっぽい顔。

「僕まだフォローしてないんですけど、」

ニヤッと笑う。

「広瀬さんと同時にフォローしたら驚きますかね」

ニヤニヤしている。

貴明も少し笑う。

「酔った勢いでやっちゃいましょうか」

晃がスマートフォンを構える。

「せーの」

二人の指が。

同時に画面に触れた。