真昼の星空

晃がスマートフォンを耳に当てたまま、少し離れた場所で立っている。

ホテルのロビー。
シャンデリアの光。
行き交うスタッフ。

「え、あの陽さんの事泣かせてた人?」

少し笑う。

「そっか。」

小さく頷く。

「良かったね。また会えて。」

少し間。

「じゃあ俺もいよいよ彼女作ろうかな。」

柔らかい声。

「うん。じゃ、元気で。」

通話が切れる。

その後ろから声。

「望月さんお疲れ様です」

振り向く。

「広瀬さん。今日はお疲れ様でした。」

晃が礼儀正しく頭を下げる。

ホテルの会場では。

HOPEの新イメージキャラクター
望月晃に決定のマスコミ発表。

まだ報道陣のざわめきが残っている。

広瀬が少し声を落とす。

「今、ちょっと聞こえちゃったんですけど…」

晃が少し驚く。

「あ、すみません、私用で…」

軽く頭を下げる。

「失礼致しました。」

広瀬が聞く。

「いえいえ。ところで陽さんて…」

晃が答える。

「え?あぁ…森谷陽さん、です。」

少し懐かしそうな顔。

「編み物の。」

視線を戻す。

「ご存知なんですか?」

広瀬が少しだけ考えるような表情。

「以前ちょっと…」

視線が遠くなる。

「望月さんは?」

晃が少し言葉を止める。

「ぼくは…」

考え込む。

ホテルのロビーの音だけが流れる。

広瀬が言う。

「彼女元気なんですね。」

小さく息を吐く。

「良かった。」

少し寂しそうな顔。

「全然連絡してなかったから。」

少し間を置く。

「望月さん、もしこれからお時間あるようでしたら」

晃を見る。

「上のバーで少しお話しませんか?」

晃がスケジュールを思い出す。

「これからいくつか取材があるので」

少し首を傾げる。

「その後なら…」

(なんだろ…)

心の中で思う。

広瀬が頷く。

「分かりました、ではこれ、連絡先です。」

名刺を差し出す。

「終わったら連絡ください。」

晃がそれを受け取る。

指先に残る紙の感触。

静かなホテルのロビー。

二人は短く会釈を交わした。