真昼の星空

「安心して。」

雅人が見る。

「ブロックしたりしないから。」

雅人の表情が少し変わる。

「電話も出るし。LINEも返すし。」

10年前との違い。

ちゃんと伝えてる。

「また。」

少しだけ笑う。

「美味しいお店連れてって。」

雅人が小さく笑う。

「俺の心の中。丸見えみたいだな。」

陽が笑う。

「さすがようちゃん。」

その呼び方。嫌じゃない。そう呼ばれるたびに泣きそうになるのを抑える。


駅の前。

人の流れ。

10年前と同じじゃない景色。

「じゃあさ。」

雅人が少しだけ迷って言う。

「ハグしていい?」

陽は即答する。

「だめ。」

でも。

言い方は優しい。

「家着いたらLINEするから。」

約束の言葉。雅人が少し笑う。

「わかった。我慢する。」

昔ならしてた。

強引に抱きしめてた。

でも今はしない。

陽がそれに気付く。

(大人になったんだ)

「じゃあね。」

陽が言う。

「じゃあね。」

雅人も言う。

少しだけ距離が空く。陽は歩き出す。
数歩進んでから思う。

(振り返ったらだめ)

でも。振り返ってしまう。
雅人もまだ立っていた。

目が合う。

少し照れて手を上げる雅人。

陽も小さく手を振る。

それだけ。
それだけなのに。
胸が少し痛い。

(また好きになるかも)

そう思ってしまった。


家に着いて。靴を脱いで。

一人になる。

でも。

静かな部屋なのに。
さっきまでの時間がまだ残ってる。
陽はソファーに座る。
少しだけぼーっとする。

(……まさくん)

スマホを手に取る。
少し考えてからLINEを打つ。

家ついたよ。
今日はごちそうさまでした。

打っては消して。

また打つ。

これから荷物の片付けと残った仕事少しするから返信遅くなるけど心配しないでね。

陽らしい文章。

最後に。

じゃ、またあとで。

送信。

送ったあと少しだけ後悔する。

(またあとでって何)

思わず笑ってしまう。

危ないな…