しばらく黙っていた雅人が、やがて話し始めた。
真っ直ぐ前を向いたまま。
夜景の向こうに視線を置き、静かな声で。
入学式で、初めて陽を見たこと。
少し緊張した横顔と、すっと伸びた背筋が忘れられなかったこと。
いつも人の輪の中心にいて、笑っている陽を、気づけば目で追っていたこと。
友達になりたかったこと。
でも近づくきっかけもなく、遠くから見ているしかなかったこと。
星空を見上げている陽の姿を何度か見かけて、
少し離れた場所で、自分も同じ空を見上げたこと。
電車でリュックが開いていた時、肩を叩いて教えてくれたのが陽で、息が止まりそうなくらい驚いたこと。
あの日から世界が変わったこと。
挨拶できるようになって、名前を呼べるようになって、
それだけで毎日が嬉しかったこと。
なのに、なかなか会えなくて苦しかったこと。
どこにいても、ようちゃんを探してしまったこと。
大学のカフェで、隣の席にいた女子たちの会話が聞こえてしまったこと。
陽には好きな人がいると知ったこと。
その瞬間、失恋したと思ったこと。
平気なふりをしていたのに、広哉に見抜かれて、
慰められたこと。
笑われながらも、救われたこと。
全部。
全部、話した。
言葉にするたび、胸の奥にしまっていた時間がほどけていく。
陽は涙の跡が残る顔で、静かに聞いていた。
自分だけが苦しかったわけじゃなかったのだと、
今、やっと知るように。
陽が小さく息を吸って、ぽつりと言った。
「片思い、つらかった」
夜景の光が、涙の跡をやさしく照らしている。
「初めてなの。誰かのこと、こんなに好きになったの」
雅人は何も言わず、その声を聞いていた。
「まさとくんの彼女になれた人は、幸せだなって……ずっと思ってたの」
その言葉に、雅人は苦く笑う。
「ようちゃんに、そんなに思われてるやつはどんなやつなんだって」
少し肩をすくめる。
「ずっと悔しかった」
陽は目を丸くして、それから泣き笑いのような顔になる。
雅人は向き直り、まっすぐ言った。
「ようちゃん、好きだよ」
声が震えるほど、本気だった。
「大好き。幸せにする」
陽の唇が小さく揺れる。
「まさくん……」
初めてそう呼んだ声だった。
雅人の胸が熱くなる。
「私も、ずっとすごく……好きだった」
陽は涙をこらえながら笑う。
「名前も、声も、何もかも知らないのに」
雅人は少しだけ意地悪く笑った。
「具合悪くなるくらい?」
「やめてよ」
陽は照れ隠しに、雅人の胸を軽く叩く。
その手を、雅人がそっと包んだ。
陽は不安そうに見上げる。
「もう、不安にならなくてもいい?」
その問いに、雅人は迷わず頷いた。
「うん」
そして静かに続ける。
「今までも、これからも、ようちゃんしか見てないよ」
陽の瞳がまた潤む。
「毎日、会える?」
「会えるよ」
「いつでもLINEしていい?」
「いいよ。俺もする」
二人は見つめ合ったまま、しばらく笑っていた。
長すぎた片想いのあとで、
まだどこか夢の中にいるようだった。
真っ直ぐ前を向いたまま。
夜景の向こうに視線を置き、静かな声で。
入学式で、初めて陽を見たこと。
少し緊張した横顔と、すっと伸びた背筋が忘れられなかったこと。
いつも人の輪の中心にいて、笑っている陽を、気づけば目で追っていたこと。
友達になりたかったこと。
でも近づくきっかけもなく、遠くから見ているしかなかったこと。
星空を見上げている陽の姿を何度か見かけて、
少し離れた場所で、自分も同じ空を見上げたこと。
電車でリュックが開いていた時、肩を叩いて教えてくれたのが陽で、息が止まりそうなくらい驚いたこと。
あの日から世界が変わったこと。
挨拶できるようになって、名前を呼べるようになって、
それだけで毎日が嬉しかったこと。
なのに、なかなか会えなくて苦しかったこと。
どこにいても、ようちゃんを探してしまったこと。
大学のカフェで、隣の席にいた女子たちの会話が聞こえてしまったこと。
陽には好きな人がいると知ったこと。
その瞬間、失恋したと思ったこと。
平気なふりをしていたのに、広哉に見抜かれて、
慰められたこと。
笑われながらも、救われたこと。
全部。
全部、話した。
言葉にするたび、胸の奥にしまっていた時間がほどけていく。
陽は涙の跡が残る顔で、静かに聞いていた。
自分だけが苦しかったわけじゃなかったのだと、
今、やっと知るように。
陽が小さく息を吸って、ぽつりと言った。
「片思い、つらかった」
夜景の光が、涙の跡をやさしく照らしている。
「初めてなの。誰かのこと、こんなに好きになったの」
雅人は何も言わず、その声を聞いていた。
「まさとくんの彼女になれた人は、幸せだなって……ずっと思ってたの」
その言葉に、雅人は苦く笑う。
「ようちゃんに、そんなに思われてるやつはどんなやつなんだって」
少し肩をすくめる。
「ずっと悔しかった」
陽は目を丸くして、それから泣き笑いのような顔になる。
雅人は向き直り、まっすぐ言った。
「ようちゃん、好きだよ」
声が震えるほど、本気だった。
「大好き。幸せにする」
陽の唇が小さく揺れる。
「まさくん……」
初めてそう呼んだ声だった。
雅人の胸が熱くなる。
「私も、ずっとすごく……好きだった」
陽は涙をこらえながら笑う。
「名前も、声も、何もかも知らないのに」
雅人は少しだけ意地悪く笑った。
「具合悪くなるくらい?」
「やめてよ」
陽は照れ隠しに、雅人の胸を軽く叩く。
その手を、雅人がそっと包んだ。
陽は不安そうに見上げる。
「もう、不安にならなくてもいい?」
その問いに、雅人は迷わず頷いた。
「うん」
そして静かに続ける。
「今までも、これからも、ようちゃんしか見てないよ」
陽の瞳がまた潤む。
「毎日、会える?」
「会えるよ」
「いつでもLINEしていい?」
「いいよ。俺もする」
二人は見つめ合ったまま、しばらく笑っていた。
長すぎた片想いのあとで、
まだどこか夢の中にいるようだった。

