真昼の星空

「ようちゃん。」

雅人がまっすぐ言う。

「また付き合お?」

陽が止まる。

「俺、ようちゃんだけだったよ。」

空気が少し変わる。

陽がゆっくり言う。

「……ちょっと待ってよ。」

現実に戻る声。

「はっきり言っていい?」

雅人が頷く。

「今のまさくん。凄く胡散臭い。」

雅人が固まる。

「高そうなスーツ着て。高そうな時計して。
高そうな靴履いて。高そうな鞄持って全然違う人みたい。」

陽の目は真剣だった。

「海外放浪してた人に見えない。ほんとに外国行ってた?」

雅人は黙る。

「本当は日本いたんじゃないの?」

少しだけ声が震える。

「私と別れるために嘘ついたの?」

昨日から思っていた疑問。
全部溢れる。

静寂。

雅人が小さく言う。

「……ごめん。会えたの嬉しくて。焦りすぎた。」

嘘じゃない声。
昨日、新大阪駅で別れてから、止まらないLINE。帰りの新幹線も一緒。
完全に雅人のペース。

でも。

嫌じゃない。懐かしさ。嬉しさ。心地よさ。全部混ざっている。

でも。

(このまま戻ったら…忘れる努力はなんだったの?)

だから。

「まさくん。」

少し真剣な声。

「あの頃と同じ勢いで来られても困る。」

雅人が聞く。

「……どうすればいい?」

陽は答える。

「まず。ちゃんと話して。この10年。どこで何してたのか。そこから。」

試す目だった。

雅人がゆっくり話し始める。

「イタリアでブドウ農園で働いて。」

陽が少し驚く。

「ブラジルではコーヒー農園。」

「色んな国で色んなバイトしながら旅してた。」

昔のまさくんだ。

「そこで知り合った人たちがいてさ。帰国してから。ワインとコーヒー輸入始めた。」

陽が少し笑う。

「うん。」

「最初全然売れなかったけど。人に恵まれてさ。少しずつ広がって今はレストランとかBARに卸してる。」

陽が聞く。

「大阪は?」

「新しくオープンする店の商談。」

陽が言う。

「だからその格好?」

雅人が少し照れる。

「安いの着てくとさ。舐められるんだよ。
いいもの着てる方が話早い。」

現実の話。

陽は納得する。

「ちゃんと大人になったんだね。」

雅人が笑う。

「ようちゃんに言われると複雑。」

雅人が言う。

「でもさ。どこ行っても思ってた。」

陽が顔を上げる。

「ようちゃんだったらこのコーヒー好きそうだなとか。」

「このワイン似合いそうだなとか。」

陽が何も言えなくなる。

「ずっと。一緒にいないのに。いつも一緒にいるみたいに、基準はようちゃんだった。」

静かな告白。