「ようちゃんはどうしてお店とか本とか出したの?」
陽少し考える。
「私編み物好きだったじゃない?」
雅人すぐ頷く。
「うん。俺もいっぱい編んでもらった。」
少し間を置いて。
「全部大事にしてるよ。」
陽笑う。
「ほんとに?」
雅人即答。
「うん。」
「寒い国行く時には持って行って着てたよ。」
「どの国行っても褒められた。」
陽首を振る。
「まさか。」
雅人スマホを取り出す。
「ほら。」
カメラロールを遡る。
雪景色。
外国の街並み。
その中に――
陽が編んだセーター。
マフラー。
帽子。
どの写真にも写っている。
陽固まる。
指で画面を触る。
「ほんとだ…」
雅人静かに言う。
「ようちゃんのだから。」
「一緒に連れて行ってた。」
陽何も言えない。
胸がいっぱいになる。
「…捨てたと思ってた。」
雅人驚く。
「なんで?」
陽小さく笑う。
「別れたら普通そうじゃない?」
雅人首振る。
「捨てるわけない。」
「ようちゃんにもらったもの捨てるなんて出来ない。」
少しだけ照れて言う。
「俺、あの頃本気だったから。」
陽涙がにじむ。
「…あの頃?それは私も。」
雅人答える。
「今もだけど。」
「あの時…まさくんに一緒に外国旅しようって言われた時」
雅人の手が止まる。
息を飲む。
「実は雑誌に私の作品掲載したいって話があったの。」
「え…?」
「それで、嬉しくてその事まさくんに報告しようと思ってた日だったの。」
「え?そうなの?」
陽頷く。
「そう。」
「それで、一緒に行こうって言ってくれて凄く嬉しかったのに…」
少し目を伏せる。
「人気のあるファッション誌からのオファーだったし。」
「素直に行くって言えなくて。」
雅人は何も言えない。
陽が続ける。
「私の事でまさくんの夢諦めて欲しくなかったし。」
静かに。
「私も、自分の夢諦めたくなかった。」
雅人椅子にもたれて頭を抱えた。
「…知らなかった。」
陽笑う。
少し寂しく。
「ごめんね、言えなかった。」
雅人震える声。
「なんで言わなかったの。」
陽優しく言う。
「まさくんに悩んで欲しくなかったの。」
少し間。
「好きすぎたから。」
雅人顔を上げる。
陽続ける。
「まさくんの夢邪魔したくなかった。」
「でも本当は…」
少し詰まる。
「一緒に行きたかった。」
沈黙。
雅人目が赤い。
「俺も。」
声が震える。
「ようちゃん連れて行きたかった。」
「行けなくても、待っててくれるって勝手に思ってた。」
陽小さく笑う。
「待ってたよ。諦めたつもりでいたけどまた会えてわかった。ホントはずっと会いたかったんだって」
雅人固まる。
「え?」
陽涙をこぼす。
「ずっと。」

