雷鳴に花が咲く


雷くん、全然変わってなかったな。背は少し伸びてた気がしたけど、優しいところはあの頃のまま。それに相変わらず、カッコよかったし。



「ねえ、今、雷先輩の話してなかった?」


話しかけてきたのは、同じクラスの関口桃ちゃん。小柄で可愛らしい子で、顎らへんで揃えられた髪は、ヘアアイロンで綺麗に内巻きにカールされている。



「桃ちゃん、雷くんのこと知ってるの?」
「知ってるも何も有名だよ!」



桃ちゃんは前のめりになってそう言うと、制服のポケットから携帯を取り出し、画面を見せてくる。そこには、学校の中庭で撮られたと思われる、制服姿の雷くんが映っていた。



「これって、盗撮?」
「違うよ夏美ちゃん。これはファンクラブの写真担当が撮った写真で、けして盗撮なんかじゃありません」
「それを盗撮って言うんじゃ」
「違いますー」



夏美ちゃんの言葉に、確固として否定する桃ちゃんに、私は苦笑いをする。



「二年の大地雷といえば、学年一、いや学校一のイケメンで人気者。その上、ダンス部のエース的存在で、アメリカにも留学経験があって英語もペラペラ。文武両道の完璧な男子。まさに女子が憧れる存在!」



知らなかった。モテそうだなとは思っていたけど、雷くんて、そんなに人気なんだ。……でも、そうだよね、人気がない方がおかしいかも。



「あのクールで簡単に人を寄せつけないところとかもう最高に良いんだよね〜♡ま、私は怜夜くん派だけど。顔がタイプ♡花音ちゃんは、雷先輩のファンなの?」
「ファンというか……」
「花音にとって、雷くんは特別な人だもんね」
「う……うんっ」



夏美ちゃんの言葉に、私は少し照れながら笑みを浮かべ頷く。

雷くんは、私の世界を変えてくれた人だ。



「えっ、何それどういうこと!?」
「一言では言い表せないんだけど、とにかく私の世界を変えてくれた恩人なの」



私の言葉に、桃ちゃんは目を丸くすると、優しく笑った。



「よく分からないけど、なんかすっごく大切な思い出みたいだね」
「うん」



雷くんに出会うまでの私は、心がモヤモヤとする日々を過ごしていた。周りが将来の夢を語る中、やりたいことすらも見つからなくて、この先、大丈夫かなっていつも不安だった。そんな時、雷くんのあのダンスを見て、私も人の心を動かせるような人になりたいって思った。私にとって雷くんは、ずっと特別な人だ。