Fahrenheit -華氏- Ⅲ


量を増やしたところで効果があるのかどうか分からなかったが、今はこの薬だけが頼りだ。


けれど二包目を飲んでも、状態は変わらなかった。


それどころか不安や悲しみは薬を飲む量と比例して増していった気がする。


アルコールと一緒なのがいけないのだろうか。普段は眠くなる筈なのに、眠気は一向にやってこず―――…


時間と共に増して行く




悲しみ。



どれぐらい飲んだのだろう。


開けたばかりのワインボトルはほとんど空になっていた。


~♪


そんなとき携帯から着信音が鳴った。


バカみたいに一瞬「啓かも」と期待したけれど





着信:M




になっていて、


何で……


何で



「何であんたなのよ!」



あたしは携帯をローテブルに投げつけた。


力いっぱい投げつけたからか、ガラス製のローテブルにぶつかった携帯は見事に画面にヒビが入り真っ黒になった。


あたしは、はっとなってその場を立った。


今頃薬の効果が現れたのか、それともアルコールが回ったのか、力が入らない足を何とか動かしふらつく足取りでワインボトルを手にしながらその壊れた携帯が落ちた元へと歩み寄る。


震える手で壊れて落ちた携帯に手を伸ばす。





これは―――啓とお揃いの携帯。




壊れちゃった。


あたしが




  こ わ し た