僕達は色のある世界で生きている。色に出会ったのはいつだろうと考えてみる。人の目で区別できる色の数は750万種類以上とも言われている。そんな色彩に僕は心を動かされる。でも、人間は違う。同じ人間なのに黄色に見える時もあれば真っ黒に見える時もある不思議な生き物。そんな僕も周りから見たら同じ生き物かとため息をつく。
菅原文也は東琳高校に通う高校一年生。物心ついた時から絵を描くのか好きで小学生の頃から現在に至るまで絵画コンクールに出場しては賞を総なめにしている。
美術部とバスケット部に所属しバスケット部は一年生ながら主将として活躍するくらい才能があるが、美術部が主なため週に一回しかバスケット部には顔を出していない。
バスケットを始めた理由も自分の意思ではなく父の勧めで始めた。理由はいつも小さな時から外に出ず誰とも遊ばす絵ばかりをずっと描いていたから。
そんなバスケットも本人は嫌では無かったらしく小学校中学校と部活に励んでいた。少しずつ友達も増えて来て両親も安心している。そんな父親は代々続く医者の家系。父親が医院長を務める病院を文也に継がせるため、毎年東大や京大への合格者を多数輩出する全国でも指折りの進学校東琳高校へと入学した。
「文也!絵ばっかり描いていないで早く学校に行こうよ!し!入学初日から遅刻は嫌だよ!」伊藤奏は小さい頃からの幼馴染。文也は小さい頃はいつも外にも出ず家の中で絵を描
いていたので見かねた奏は文也の手を引っ張り外へ連れ出していた。
「文也は小さい頃からいつもそうだったよね。私が遊びに行こうって誘っても、今日は行きたくないって。本当に絵を描くのが好きだったんだね」
文也が「好きだったんじゃなくて好きなの」と言って軽く奏の頭に手を乗せる。「この手置き最高」と笑う。
奏が「勝手に人の頭の上に手を乗せないでっていつも言ってるでしょ」とぼやく。「小さい頃は私が背が高かったけど中学生2年の夏ぐらいから文也急に背が伸びたよね」と言って手を上げて身長を測る仕草をする。「ところで今身長何cmくらいあるの?中学校卒業する時くらいは175cmくらいだったよね?」
「今は187cmくらいある。まだ伸びてるかも」と言ってまた奏の頭に手を乗せる。
「だから手を乗せないでって言ってるじゃん!あっそういえば今年から新設する美術部に入部するんでしょ?バスケ部は入部しないの?」
奏の頭の上に乗せた手を下ろして文也が「父親がうるさいから週に一回だけバスケ部に行くことにした」
不思議そうな顔をして奏が「小中学校ずっとバスケ頑張ってたじゃない?文也くんのお父さんも喜んでたよ」
と言うと文也は「本当の色に出会うため」と当然といった調子で言う。
怪訝な表情を覗かせ奏が「本当の色?」と言う。
また文也は意地悪そうな顔をして奏の頭の上に手を乗せて「そんなに喋ってばっかりいたら遅刻するぞ。早く行くぞ」
奏が「それは私のセリフ!」と言った瞬間、奏の頭に乗せていた手をえ下ろし手を引っ張り笑顔で走り出した。
「おい!文也久しぶり!同じクラスになって良かったな!」と声を掛けてきたのは中学生時代バスケ部で一緒だったお調子者の鴨川亮だ。
「良くないよ」と冷めた目をした文也。
「そんなこと言うなよ!釣れないやつだなぁ!これから三年間よろしくな!」と文也の肩を叩きながら言う。「ところで文也はもちろん部活はバスケ部に入るよな?」「バスケ部に入るよ。週に一回」と文也が言うと「なんで中学の時に主将でエースだったお前が週に一回しか来ないんだよ!」と少し怒った様子の表情を見せてみると「美術部に入るから」と愚にもつかない顔で窓の外でサッカーをしている生徒をボーっと見やる。「かーっ!マジで昔から絵描くの好きだよな!そんなに絵描くの好きだったら俺の全裸を描いてみないか⁉︎」おちゃらけて見せた。「まあ、決めたんだったら仕方ねーけどぜってーサボんじゃねーよ?」と文也に顔を近づけると、文也は「お前がさぼるなよ」と言って亮の鼻をつまんだ。2人が戯れあっていると後ろから「あんた達も一緒のクラスだったのね!三年間よろしくね!」と笑顔で言う奏だ。びっくりした目で奏を見る亮が「おー!奏久しぶりじゃん!元気そうだなぁ!お前スタイル良くなったなぁ!」と両手を頭に当てて腰をクネクネさせながら言うと奏が「亮!あんた相変わらずお調子者だね!」と言い、文也はそんな2人の様子をよそ目にまた窓の外を一人眺めていた。
授業が終わり部活の時間になると文也は美術部へと足を運んだ。美術室に入ると殺風景な部屋の中にスタンド三脚タイプのイーゼルにキャンバスに描かれた絵が目に飛び込んできた。青空に白い雲木の下に佇む白いワンピースを着た麦わら帽子を被った少女の絵。明るい絵なのになんだか少女がとても寂しそうに見えた。暫く絵を眺めているとドアを開ける音が聞こえ一人の女性が入ってくる。凛とした表情の中にどこか懐かしさを感じさせる。でもどこか寂しそうに見える。絵の中の少女みたいに。「初めまして、今日から美術部の顧問になる桃咲はるかと言います。あなたが菅原文也君?」と言うと文也が「そうです。他の部員は?」と言うと「たぶんもうすぐ来ると思うわ」と言い、すぐにドアが開いて2人入ってきた。「紹介するわね、三年生の橘花薫さんと二年生の汐塚優君。2人とも自己紹介して」と言うと「三年生の橘花薫です!よろしくね!」と挨拶。「二年の汐塚優です!よろしく!背が高くて美男子だね!モテるでしょ⁉︎」「いいえ、全然」と生返事。「菅原君クールだねー!そんなところもモテる秘訣かな⁉︎」とからかい気味に言うと桃咲が「はい!冗談はそのくらいで部活始めるわよ!」と笑いながら言う。「自己紹介は終わったので本題を話します。毎年夏に高校美術展があってそれに3人を応募しようと思ってる。今からは美術展に向けた作品を考えて制作いく作業を夏の本番までに仕上げていって貰えたらと思う。いいかな?」横から汐塚が「先生!菅原君は入部したばかりだから基礎練習とか教えなくても良いんですか?」諭す様に橘花が言う「知らないの?菅原君は小学生の頃から美術コンクールずっと一位とってるのよ?だから汐塚君が菅原君から教えてもらわないといけないくらいよ?」照れたみたいに「じゃあ菅原先生御指導宜しくお願いします!」と汐塚が言う。
部活が終わり帰ろうとすると「菅原君は楽しそうに絵を描くよね」と桃咲が言うと「先生はとても寂しそうな絵を描きますね」と一言残して帰って行った。
入学してから3ヶ月たった7月高校美術展が始まった。校内選考から始まり順調に進んでいくと、県大会そして全国大会へと進んで行く。東琳高校からは文也のみ全国大会へ出場している。各都道府県から推薦された絵画、彫刻、デザイン、工芸、映像などの作品が一同に展示されており、文也の作品は絵画部門での出展となる。
「菅原くんはいつも楽しそうに絵を描くね」と桃咲は微笑みながら真っ直ぐな瞳で問いかける。
「僕は色と一緒に遊んでいるから楽しいですよ」と穏やか何表情で桃咲を見る
「なんで先生は絵を描くのが楽しく無いんですか?」と桃咲の背中越しに言う
「私も菅原君と一緒で小学生の頃からプロの画家になってからも絵画コンクールでいつも受賞してたの。美術関係者や家族や友人から称賛の声を貰うたびに何の為に誰の為に絵を描いているんだろうと思ってた。小さい頃楽しかった絵を描く事が苦痛になってきてプロの画家を辞めて、知り合いの紹介で高校教師になって美術部の教師をしているの」と遠くを見て話している
「じゃあ僕が先生に絵を描く楽しさを教えてあげるよ」と穏やかな笑顔で語りかけた。
東琳高校に全国高校美術展の結果が届き文也の作品が大賞を受賞した。
この事は勿論全学生にも告知され、全校集会では校長からの賞状の授与式も行われた。
体育祭は歓声と称賛に溢れ返っていたが、当の本人は表情ひとつ変えず一礼したあと降壇した。
「文也全国大会優勝でマジ凄いじゃん!やっぱやるねお前は!」と興奮した様子で汐塚は文也を見る。
「別に凄くないよ」と謙遜とは違うニュアンスで答える。
文也の表情を読み取り話題を変える「そういえば今日バスケに来る日だよな!もうすぐ部活始まるから一緒に行こうぜ!」と声を掛ける。
文也の高校はバスケ全国大会に出る常連校であり強豪だ。
文也は週に一度しか来ていないが三年生を差し置いてレギュラーの座を獲得している。
「菅原。お前美術部を辞めてバスケに専念することは出来ないのか?」とバスケ部顧問の高崎が言う。
「バスケは今のペースで頑張りたいと思います」と言いかけたところで「キャー!菅原くーん!」と黄色い声援が体育館に響き渡る。菅原には既にファンが沢山いて『推し活ナンバーワン』なのである。
文也はバスケの夏の県大会に出場しMVP級の活躍を見せて一年生ながらにすっかりチームのエースだ。
「文也!美術部とバスケ部の両立大変じゃ無い?勉強も頑張ってるなんて偉いね!」と奏が言う。奏も小学生の頃からバスケをしており東琳高校でも女子バスケ部に入部しレギュラーになれるほど運動神経抜群だ。
「俺、偉いから」と文也はゴールに狙いを定めてスリーポイントシュートを決める。
スリーポイントシュートが鮮やかに決まるとまた例の『推し活ナンバーワン』が「キャー!菅原くんカッコイイ!」と黄色い声援は止まない。
「あのうるさいの静かにさせて」と奏に言うが文也からボールを奪い取り「ファンが沢山いた方がいいじゃん!」とスリーポイントシュートを打つがゴールから大きく外れる。
バスケ部の練習が終わり文也と奏の家は隣なので必然といつも登校と下校は同じ道だなので一緒に帰る。
奏が「文也覚えてる?私たちが幼稚園に行ってた頃、文也はいつも1人で絵を描いて遊んでいてそんな様子を面白がって意地悪な男の子たちから『お前絵ばっかり描いて女みたいだな!』と言ってイジメらていたよね。でもそんな悪口を言われても文也はニコニコして絵を描いていたよね。文也が描いた絵を見ると女の子と男の子が正面に向かい合わせに立っていて、男の子が女の子に指輪をしてあげている絵が描いてあって『これってもしかしてわたしたち?』聞くと『うん』って言ってわたしが「なんでわたしたちを描いたの?って言ったら『将来のお嫁さんだから』って言ってたよね?その絵はいまでも私の部屋に飾ってあるのよ」と夕日が沈みかけていた。「覚えてない。また明日な」と言って家に帰って行った。
夏が終わり今年もあと二ヶ月で終わる頃一年生の期末テストが行われた。学校の校内で期末テストの順位が廊下に張り出され、文也は学年一位となっていた。自宅へ戻り食事の時間になると父と母と文也の三人が揃い期末テストの話題になった。父は満足げに「この調子でいけば国立の医学部もストレートで通るな」と言うと「僕は美大に入りたいです」と正直な気持ちを話すと、父は困惑と憤りが混ざり合った表情をして黙り込み「ご馳走様でした」と食事もままならないまま席を立ちその場を後にした。
父が経営する病院へは小さい頃からよく遊びに行っていた。病院の廊下を歩いていると快晴の下キャンバスに絵を描いている車椅子に乗った少女を見かけた。当時の文也は7歳で少女は文也より少し年齢は上に見えた。少女が絵を熱心に描いている姿を見ていると後ろから父が来て「あの子は文也と6つ違うから今は13歳かな。一生治らない病気にかかって本人も塞ぎ込んでいたけど絵を描き出して元気になっていったんだ」と嬉しそうに少女を見やる。
「僕は将来どんな病気も治せるようなお医者さんになるからね」と少女に視線を送っていた。
菅原文也は東琳高校に通う高校一年生。物心ついた時から絵を描くのか好きで小学生の頃から現在に至るまで絵画コンクールに出場しては賞を総なめにしている。
美術部とバスケット部に所属しバスケット部は一年生ながら主将として活躍するくらい才能があるが、美術部が主なため週に一回しかバスケット部には顔を出していない。
バスケットを始めた理由も自分の意思ではなく父の勧めで始めた。理由はいつも小さな時から外に出ず誰とも遊ばす絵ばかりをずっと描いていたから。
そんなバスケットも本人は嫌では無かったらしく小学校中学校と部活に励んでいた。少しずつ友達も増えて来て両親も安心している。そんな父親は代々続く医者の家系。父親が医院長を務める病院を文也に継がせるため、毎年東大や京大への合格者を多数輩出する全国でも指折りの進学校東琳高校へと入学した。
「文也!絵ばっかり描いていないで早く学校に行こうよ!し!入学初日から遅刻は嫌だよ!」伊藤奏は小さい頃からの幼馴染。文也は小さい頃はいつも外にも出ず家の中で絵を描
いていたので見かねた奏は文也の手を引っ張り外へ連れ出していた。
「文也は小さい頃からいつもそうだったよね。私が遊びに行こうって誘っても、今日は行きたくないって。本当に絵を描くのが好きだったんだね」
文也が「好きだったんじゃなくて好きなの」と言って軽く奏の頭に手を乗せる。「この手置き最高」と笑う。
奏が「勝手に人の頭の上に手を乗せないでっていつも言ってるでしょ」とぼやく。「小さい頃は私が背が高かったけど中学生2年の夏ぐらいから文也急に背が伸びたよね」と言って手を上げて身長を測る仕草をする。「ところで今身長何cmくらいあるの?中学校卒業する時くらいは175cmくらいだったよね?」
「今は187cmくらいある。まだ伸びてるかも」と言ってまた奏の頭に手を乗せる。
「だから手を乗せないでって言ってるじゃん!あっそういえば今年から新設する美術部に入部するんでしょ?バスケ部は入部しないの?」
奏の頭の上に乗せた手を下ろして文也が「父親がうるさいから週に一回だけバスケ部に行くことにした」
不思議そうな顔をして奏が「小中学校ずっとバスケ頑張ってたじゃない?文也くんのお父さんも喜んでたよ」
と言うと文也は「本当の色に出会うため」と当然といった調子で言う。
怪訝な表情を覗かせ奏が「本当の色?」と言う。
また文也は意地悪そうな顔をして奏の頭の上に手を乗せて「そんなに喋ってばっかりいたら遅刻するぞ。早く行くぞ」
奏が「それは私のセリフ!」と言った瞬間、奏の頭に乗せていた手をえ下ろし手を引っ張り笑顔で走り出した。
「おい!文也久しぶり!同じクラスになって良かったな!」と声を掛けてきたのは中学生時代バスケ部で一緒だったお調子者の鴨川亮だ。
「良くないよ」と冷めた目をした文也。
「そんなこと言うなよ!釣れないやつだなぁ!これから三年間よろしくな!」と文也の肩を叩きながら言う。「ところで文也はもちろん部活はバスケ部に入るよな?」「バスケ部に入るよ。週に一回」と文也が言うと「なんで中学の時に主将でエースだったお前が週に一回しか来ないんだよ!」と少し怒った様子の表情を見せてみると「美術部に入るから」と愚にもつかない顔で窓の外でサッカーをしている生徒をボーっと見やる。「かーっ!マジで昔から絵描くの好きだよな!そんなに絵描くの好きだったら俺の全裸を描いてみないか⁉︎」おちゃらけて見せた。「まあ、決めたんだったら仕方ねーけどぜってーサボんじゃねーよ?」と文也に顔を近づけると、文也は「お前がさぼるなよ」と言って亮の鼻をつまんだ。2人が戯れあっていると後ろから「あんた達も一緒のクラスだったのね!三年間よろしくね!」と笑顔で言う奏だ。びっくりした目で奏を見る亮が「おー!奏久しぶりじゃん!元気そうだなぁ!お前スタイル良くなったなぁ!」と両手を頭に当てて腰をクネクネさせながら言うと奏が「亮!あんた相変わらずお調子者だね!」と言い、文也はそんな2人の様子をよそ目にまた窓の外を一人眺めていた。
授業が終わり部活の時間になると文也は美術部へと足を運んだ。美術室に入ると殺風景な部屋の中にスタンド三脚タイプのイーゼルにキャンバスに描かれた絵が目に飛び込んできた。青空に白い雲木の下に佇む白いワンピースを着た麦わら帽子を被った少女の絵。明るい絵なのになんだか少女がとても寂しそうに見えた。暫く絵を眺めているとドアを開ける音が聞こえ一人の女性が入ってくる。凛とした表情の中にどこか懐かしさを感じさせる。でもどこか寂しそうに見える。絵の中の少女みたいに。「初めまして、今日から美術部の顧問になる桃咲はるかと言います。あなたが菅原文也君?」と言うと文也が「そうです。他の部員は?」と言うと「たぶんもうすぐ来ると思うわ」と言い、すぐにドアが開いて2人入ってきた。「紹介するわね、三年生の橘花薫さんと二年生の汐塚優君。2人とも自己紹介して」と言うと「三年生の橘花薫です!よろしくね!」と挨拶。「二年の汐塚優です!よろしく!背が高くて美男子だね!モテるでしょ⁉︎」「いいえ、全然」と生返事。「菅原君クールだねー!そんなところもモテる秘訣かな⁉︎」とからかい気味に言うと桃咲が「はい!冗談はそのくらいで部活始めるわよ!」と笑いながら言う。「自己紹介は終わったので本題を話します。毎年夏に高校美術展があってそれに3人を応募しようと思ってる。今からは美術展に向けた作品を考えて制作いく作業を夏の本番までに仕上げていって貰えたらと思う。いいかな?」横から汐塚が「先生!菅原君は入部したばかりだから基礎練習とか教えなくても良いんですか?」諭す様に橘花が言う「知らないの?菅原君は小学生の頃から美術コンクールずっと一位とってるのよ?だから汐塚君が菅原君から教えてもらわないといけないくらいよ?」照れたみたいに「じゃあ菅原先生御指導宜しくお願いします!」と汐塚が言う。
部活が終わり帰ろうとすると「菅原君は楽しそうに絵を描くよね」と桃咲が言うと「先生はとても寂しそうな絵を描きますね」と一言残して帰って行った。
入学してから3ヶ月たった7月高校美術展が始まった。校内選考から始まり順調に進んでいくと、県大会そして全国大会へと進んで行く。東琳高校からは文也のみ全国大会へ出場している。各都道府県から推薦された絵画、彫刻、デザイン、工芸、映像などの作品が一同に展示されており、文也の作品は絵画部門での出展となる。
「菅原くんはいつも楽しそうに絵を描くね」と桃咲は微笑みながら真っ直ぐな瞳で問いかける。
「僕は色と一緒に遊んでいるから楽しいですよ」と穏やか何表情で桃咲を見る
「なんで先生は絵を描くのが楽しく無いんですか?」と桃咲の背中越しに言う
「私も菅原君と一緒で小学生の頃からプロの画家になってからも絵画コンクールでいつも受賞してたの。美術関係者や家族や友人から称賛の声を貰うたびに何の為に誰の為に絵を描いているんだろうと思ってた。小さい頃楽しかった絵を描く事が苦痛になってきてプロの画家を辞めて、知り合いの紹介で高校教師になって美術部の教師をしているの」と遠くを見て話している
「じゃあ僕が先生に絵を描く楽しさを教えてあげるよ」と穏やかな笑顔で語りかけた。
東琳高校に全国高校美術展の結果が届き文也の作品が大賞を受賞した。
この事は勿論全学生にも告知され、全校集会では校長からの賞状の授与式も行われた。
体育祭は歓声と称賛に溢れ返っていたが、当の本人は表情ひとつ変えず一礼したあと降壇した。
「文也全国大会優勝でマジ凄いじゃん!やっぱやるねお前は!」と興奮した様子で汐塚は文也を見る。
「別に凄くないよ」と謙遜とは違うニュアンスで答える。
文也の表情を読み取り話題を変える「そういえば今日バスケに来る日だよな!もうすぐ部活始まるから一緒に行こうぜ!」と声を掛ける。
文也の高校はバスケ全国大会に出る常連校であり強豪だ。
文也は週に一度しか来ていないが三年生を差し置いてレギュラーの座を獲得している。
「菅原。お前美術部を辞めてバスケに専念することは出来ないのか?」とバスケ部顧問の高崎が言う。
「バスケは今のペースで頑張りたいと思います」と言いかけたところで「キャー!菅原くーん!」と黄色い声援が体育館に響き渡る。菅原には既にファンが沢山いて『推し活ナンバーワン』なのである。
文也はバスケの夏の県大会に出場しMVP級の活躍を見せて一年生ながらにすっかりチームのエースだ。
「文也!美術部とバスケ部の両立大変じゃ無い?勉強も頑張ってるなんて偉いね!」と奏が言う。奏も小学生の頃からバスケをしており東琳高校でも女子バスケ部に入部しレギュラーになれるほど運動神経抜群だ。
「俺、偉いから」と文也はゴールに狙いを定めてスリーポイントシュートを決める。
スリーポイントシュートが鮮やかに決まるとまた例の『推し活ナンバーワン』が「キャー!菅原くんカッコイイ!」と黄色い声援は止まない。
「あのうるさいの静かにさせて」と奏に言うが文也からボールを奪い取り「ファンが沢山いた方がいいじゃん!」とスリーポイントシュートを打つがゴールから大きく外れる。
バスケ部の練習が終わり文也と奏の家は隣なので必然といつも登校と下校は同じ道だなので一緒に帰る。
奏が「文也覚えてる?私たちが幼稚園に行ってた頃、文也はいつも1人で絵を描いて遊んでいてそんな様子を面白がって意地悪な男の子たちから『お前絵ばっかり描いて女みたいだな!』と言ってイジメらていたよね。でもそんな悪口を言われても文也はニコニコして絵を描いていたよね。文也が描いた絵を見ると女の子と男の子が正面に向かい合わせに立っていて、男の子が女の子に指輪をしてあげている絵が描いてあって『これってもしかしてわたしたち?』聞くと『うん』って言ってわたしが「なんでわたしたちを描いたの?って言ったら『将来のお嫁さんだから』って言ってたよね?その絵はいまでも私の部屋に飾ってあるのよ」と夕日が沈みかけていた。「覚えてない。また明日な」と言って家に帰って行った。
夏が終わり今年もあと二ヶ月で終わる頃一年生の期末テストが行われた。学校の校内で期末テストの順位が廊下に張り出され、文也は学年一位となっていた。自宅へ戻り食事の時間になると父と母と文也の三人が揃い期末テストの話題になった。父は満足げに「この調子でいけば国立の医学部もストレートで通るな」と言うと「僕は美大に入りたいです」と正直な気持ちを話すと、父は困惑と憤りが混ざり合った表情をして黙り込み「ご馳走様でした」と食事もままならないまま席を立ちその場を後にした。
父が経営する病院へは小さい頃からよく遊びに行っていた。病院の廊下を歩いていると快晴の下キャンバスに絵を描いている車椅子に乗った少女を見かけた。当時の文也は7歳で少女は文也より少し年齢は上に見えた。少女が絵を熱心に描いている姿を見ていると後ろから父が来て「あの子は文也と6つ違うから今は13歳かな。一生治らない病気にかかって本人も塞ぎ込んでいたけど絵を描き出して元気になっていったんだ」と嬉しそうに少女を見やる。
「僕は将来どんな病気も治せるようなお医者さんになるからね」と少女に視線を送っていた。
