その指先が私を誘惑する〜絡めた指先に翻弄されて〜

 専務の帰りは遅くて私の心はざわざわと複雑に高鳴り煩いくらいに鳴り響いて止まない
  
 専務は結局半日帰っては来なかった…

 





 「お帰りなさいませ」

 専務が帰ったのはお昼過ぎ。昼食の時間もまたいだ13時過ぎごろの事だった

 帰ってきた専務は何だかよそよそしかった
  
 「1人になりたいから、午後の予定はキャンセルしてくれ」

 専務が1日の予定をキャンセルするなんて珍しい…私の心はざわついた

 「分かりました。キャンセルして午後はどちらかに行かれるのですか⁇」
    
 「急遽私用が入ってこれから出る事になった。今日はもう戻らないから、そのつもりでいてくれ」

 (……今日1日の予定をキャンセルして急に入った用事ってなんだろう⁇今日はずっと専務に避けられてる気がする……)

 勘繰ってしまい、悪い方にしか考えられない私は専務がどこに行ったのかがどうしても気になってしまい、仕事に身が入らない

 結局モヤモヤとした気持ちを抱えたまま就業を迎えた私は帰り道をトボトボ歩いた
  
 すると、帰り道に和食の高級料理屋から出てくる専務を見かけた

 専務は綺麗な髪の長い女の人と2人で車に乗り込む。車の中で専務がその女の人の肩に手を回した
 
 専務の美しい指先が他の女の人に触れている

 私はショックで思わずその場から走り去っていた
 
 (……嫌だ…その指先で他の女の人に触れないで……)

 私は自分が本当に専務を好きなのだという事に気がついてしまった。専務は好きになってしまってはいけない人なのに⁈

 自分が本当に専務の事を好きなのだと言う事に気がついてしまった私は、どうして昨日専務に触れられて涙が出てしまったのか…その意味が分かってしまった

 (……その指先は私だけのものですか⁇専務がこの指先で翻弄する女性は他にもいますか⁇……)

 思ってはいけない人を好きになってしまった…
 
 抱いてはいけない感情を抱いてしまった私は、ショックな気持ちを隠せず、一晩泣き崩れるしかなかった…