広い公園の一角で子供達が遊んでいる。
その賑やかな声を聞き流しながら、青年は目の前の相手に手を差し伸べた。
「ご持参していただいた小説を確認させて頂きますね」
渡された紙の束に目を通す。
分厚い原稿用紙にキッチリ書かれた文字を一瞬“見た”だけで、青年は顔を僅かに歪めた。
あぁ…この方も、か。
少し味見をしただけで不快感が青年の口内を襲う。
間違いなくAIを使用していると確信した。
青年はしかし、笑顔を絶やさない。
目の前にいるのは異物を混入した罪深い違反者であるのと同時に、食事を長く提供してくれる事になるお抱えシェフでもあるのだから。
そうなってもらうのだから。
「今回は長編小説という事で、代金は場所を変えてのお支払いとなります…ええ、それだけ高額なのですよ」
そう言えば大抵の人間は何の疑いもなく、言われた通りに後を着いてきた。
これまでの信頼がそうさせるのか、はたまた単なる欲か…。
それは青年にとって好都合だった。
後はいつものように、睡眠薬の入った飲み物を渡して監禁してしまえばいい。
「さぁどうぞ…車の中に。お支払い場所までご案内致します」
車内に座る違反者の今後を知るのは、青年とその一族だけだった。



