あなたの小説を売ってください


「うん、そうだね」


今度こそベンチから立ち上がり、二人で帰りの電車を待つ。

話題は久しぶりに小説投稿サイト“のべりぃ”の事になり、会話が弾む。


「そういえば乙葉の好きな○○さんの新作小説、投稿されてたよ」


「嘘!本当!?帰ったら絶対読まなきゃ!」


「新しいコンテストも出てて…その…乙葉が良ければ、一緒に新しい小説を書かない?」


乙葉の顔色をうかがうように尋ねる。

監禁されていた間、やつれるぐらい物語を書き続けていたんだ。

もしかしたら乙葉はもう、小説なんて書きたくないと言うかもしれない。

私は慌てて言い直す。


「あっ、もちろん無理にとは言わないけど…」


「何で?書こうよ!楽しそう!」


明るく応じる乙葉の目を、私はきょとんとしながら見つめ返した。


「アタシ、心を入れ替えて小説と向き合う事にしたんだ。…おかげさまで小説を完成させる根性は身についたしね!ドンドン投稿するんだから!」


その言葉に「さすが乙葉!」と吹き出して笑う。

乗車する電車が到着し、乗り込もうとした時…乙葉が私に問いかけた。


「だからさ…また麻希の書いた小説、一番に見せてもらってもいい…?」