あなたの小説を売ってください


「捜査をしなかったっていうか…できなかったみたいなんだよね。あの一軒家、売り家だったみたい」


売り家…?

そんなはずはない。

現にツムグさんはあの一軒家に帰っていたし、乙葉も一ヶ月はあの場所にいたはずだ。


「何かの間違いじゃないの?ちゃんと最低限の生活感もあったよ」


「それが警察が行った時には、家の中は空っぽの状態だったって…最後にその家に住んでたのも老夫婦らしくて、もう亡くなってるらしいよ」


「…もしかして、私達が帰ってすぐに、ツムグさんは荷物をまとめて一軒家から出て行ったって事…?」


だとすれば、手慣れているように思える。

私と会った時には…いや、乙葉を誘拐した時から逃げる時の手配や段取りも済ませておいたの…?

そうじゃないといつ警察が来るか分からない中、首尾良く動くなんて難しいと思う。

小説買取人は一族でやっている。

その一族は先祖代々、目で文章を食べて食事をする…そうツムグさんは言っていた。

その権力は一体、どんな規模の物なんだろう。


「とにかく…もう、関わり合いにならない方が良いのは間違いないよね」


乙葉がそう言って苦笑した。