あなたの小説を売ってください




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乙葉が家に帰ってから一ヶ月。

行方不明の理由を“家出”という事にしたのは、ツムグさんの脅威を感じたからだった。

簡単に人を監禁できるような異常な考え方と財力。

警察になんて話したら、どんな事をされるか分かった物じゃない。


「アタシ、人生で親にあんなに怒られたの初めてだよ…」


力無く笑う乙葉の顔は、それでも監禁されていた時と比べてだいぶ元気になっている。

ツムグさんとの約束を果たすためにやってきた隣町の駅。

私達は風が吹き抜けていく構内でいつものベンチに座っていた。


「小説、飛ばされないように持っててよ」


乙葉の言葉に頷いて、茶封筒を強く抱きしめる。

季節も11月になれば、すっかり肌寒くなり上着が手放せなくなってきた。

今回、小説買取人のサイトには繋いでいない。

つまりキチンとした待ち合わせ場所と時間が決まっていないのだけど…ツムグさんが来るならこの隣町の駅で朝の10時だろうという直感があった。

一度会っただけの人間の顔すら覚えている人だ。

私達と会っていたこの場所と時間も、覚えているはず。


「もうすぐ10時だね…」


乙葉が呟いた。

私は持っている茶封筒…その中に入れてある小説の事を考える。

ツムグさんの納得する小説を書けただろうか。

もしこれがダメだったら、私達はどうなるのだろう。