あなたの小説を売ってください


「ジャンルはミステリーとホラー、それとデザートとして甘い恋愛物をオーダーしましょうか」


ツムグさんはニコリと笑って手を振る。

私は乙葉を引き連れて一目散に外へと駆けだした。


「それでは一ヶ月後にお会い致しましょう」


後ろから聞こえるツムグさんの声は、どこまでも穏やかな物だった。

急いで来た道を戻り、タクシーに乗り込む。

運転手のおじさんは乙葉を見ていくつか質問をしてきたけれど、疲れきった私達の顔色を見るなり黙って指定の目的地まで運転を始めた。

エンジンの音が聞こえる車内。

後部座席の柔らかな座面に並んで座り、私達はそれぞれ窓の景色を眺めていた。


「…ねぇ、麻希」


不意に乙葉が声を発して、私は振り向く。

乙葉は膝の上で拳を震わせていた。


「助けに来てくれて…ありがと」


呟かれた言葉に、私は微笑む。


「いいよ、気にしないで」


「小説…アタシも手伝うから」


「うん…ありがとう乙葉」


短い言葉を交わし合い、私達は肩を寄せ合って眠りについた。