あなたの小説を売ってください


「文章を…食べる…?」


何を言っているの…この人は。

そう思ったけど、ツムグさんの挙動は嘘を吐いている人間の物ではなかった。

彼は人差し指で自身の口を指し示す。


「言葉通りの意味ですよ。目で見た文章、その物語が僕ら一族のご飯…栄養源に変わるのです。物語のジャンルによっても味や風味は異なります」


もちろん、書き手によってもね___。


ツムグさんは言葉を区切って、笑顔を見せる。

口元は笑っているのに、視線だけは冷ややかな温度で私を射抜いていた。

心なしか少し怒っているようにも見える。


「僕らにとってAIの生成した文章は…例えるならプラスチックみたいな人工物です。食べ物にプラスチックが混入していたら…誰でも怒るでしょう?」


「だから…乙葉はペナルティを受けて、この部屋に?」


ツムグさんが頷いて、小さくため息をもらす。


「異物混入だなんて、僕らにとっては生死にも関わる重大な罪ですから…彼女にはその損害の分まで貢献してもらわなければなりません」


「貢献って…こんな部屋に閉じ込められてちゃ何もできないんじゃ…」


私の発した言葉を聞いて、ツムグさんは乙葉が閉じ込められているドアの下部分を指差した。

よく見ると…そこには指をかけられそうな(くぼ)みが彫られている。

ツムグさんがそこに手をかけて引っ張ると、まるでドアポストのようにその部分が開いた。


「麻希…麻希!聞こえる!?」