あなたの小説を売ってください


ツムグさんの後ろ姿を、追いかけた。

気づかれないように距離を保ちながら、見失わないようにその背中について行く。

何としてでも乙葉に辿り着くんだ。

ツムグさんの後をつければ、乙葉の居場所が分かるかもしれない。

尾行相手は駅のすぐそばにある駐車場へと入っていく。

そこに停めてあった黒い車…その後部座席に乗り込む姿を見て私は辺りを見回した。

運良く見つけたタクシーに乗り込み、運転手のおじさんに必死にお願いをする。


「あの黒い車を追いかけてください!私の友達を誘拐した犯人が乗っているんです!」


まだツムグさんが犯人という証拠なんてないし、大袈裟かもしれないけど…これくらい言わなきゃ協力してもらえない。

おじさんは驚いていたけど、私の気迫にただならない物を感じたのか渋々と了承してくれた。

タクシーが一定の距離を置きながら黒い車を追いかける。

駅を離れ、住宅地からも離れていく間にタクシーの料金メーターはどんどん上がっていく。

お金を稼いでおいて良かった。

私はツムグさんから受け取った白い封筒を握りしめる。

短編と中編で合計は三十五万円ほどあるはず…。


「乙葉…もうすぐだよ」


会えるかどうかも分からない乙葉に呟きながら、黒い車を睨みつけた。