あなたの小説を売ってください


「それは心配ですねぇ…無事だといいのですが」


「っ…」


その言動を見て確信が芽生えた。

ツムグさんは乙葉の失踪を知っている。


「あ、あの…もし、乙葉の事を何か知っているのなら___」


「あ、そちらはご持参頂いた小説ですか?確認させて頂きますね」


「あ…あの…それより、乙葉の事…を…」


ツムグさんは何も言わず、にこやかに笑みを浮かべながら手を差し出した。

その行為はまるで“もうこれ以上私と話す事はない”とでも言われているかのよう。

向かい合う顔はずっと笑顔を見せているのに、肌に感じる威圧感が私の体を強張らせた。

パクパクと口を開閉するけど、声が出ない。

ツムグさんの様子を見ても、私の精神的にもこれ以上の話し合いは無理だと痛感する。

うつむいたまま、大人しく手元の茶封筒を手渡した。

受け取ったツムグさんが中身を確認する。


「…短編小説が四作品、中編小説が一作品ですね。ありがとうございます」


頭を下げたツムグさんがカバンから白い封筒をいくつか取り出す。


「こちらが今回の代金となります。執筆お疲れ様でした」


差し出されたそれを、私は受け取る。


「それでは、失礼します。またお会いしましょう」


ツムグさんは最後にもう一度頭を下げて、私に背を向けて去って行く。

残された私は…。