あなたの小説を売ってください


「それが…あそこの娘さん、昨日から帰ってないみたいなのよ」


___家に、帰ってない?

その言葉が脳内で繰り返し巡る。

返信ができないのも、それと関係あるの…?

昨日、乙葉の身に起こった事…思いつくのは…。

“昨日”といえば___。

思い当たる一つの答えに、私は来た道を戻り家へと駆けだした。

やっぱり止めればよかった。

そう後悔しても、もう遅い。

それなら、せめて今は自分ができる事をしないと。

学校と逆方向に向かって必死に走る私を、同じ学制服を身にまとった学生達が驚いた顔で見ている。

髪の毛が乱れて汗が噴き出すのもお構いなしに足を動かした。

家の鍵を開けて乱暴に靴を脱ぐ。

そのまま自室に急ぎ、椅子に座る事すら忘れてパソコンの電源を入れた。

起動したパソコンの検索画面を開き、あの言葉を打ち込む。


“あなたの小説を売ってください”。


検索してみるけど、小説買取人のサイトには辿り着けない。

もう一度、同じ文章を入れて試す。

これもダメ。

もう一度、あと一回、次なら…。

そう思って何度も検索を試してみたけど、やはり小説買取人のサイトは現れない。


「やっぱりあの時間帯じゃないとダメなの…?」


私は倒れ込むようにその場に座り込んだ。

乙葉の行方について知っている人がいるとしたら、それは小説買取人…ツムグさんに違いない。

早く会う約束をつけないといけないのに…。

何もできずただ時間を浪費する事しかできない現状に、私は唇を噛み締める。