あなたの小説を売ってください


そうすれば、また…今までみたいにお喋りできるよね?

そんな思いを胸に秘めて、私は次の授業の用意を急いだ。


***



乙葉が次にサイトにアクセスできたのは7月の31日だった。


『今回は中々サイトに繋がらなくてさ、もう焦っちゃった』


耳にあてたスマホから乙葉の明るい声が伝わる。

ここ最近よくあくびをして眠そうだったのはそのせいか。

私は部屋のベッドに腰を下ろしながら口を開いた。


「そこまでしなくても…まだ長編小説、書けてないんでしょ?」


私も、のべりぃで長編小説を投稿した時は数ヶ月もかかった。

つい最近まで長編に頭を悩ませていた乙葉に、ましてや一ヶ月の締め切りでは難しい話だと思う。


「完成させてからでも遅くなかったんじゃないかな…小説買取人に会うのは」


短編小説で五万。

中編小説で十五万。

それなら長編小説はもっと価格が跳ね上がるんだろう。

乙葉はそれを確かめたいみたいだけど…やっぱり長編を諦めて短編や中編を書くんだろうか。


「もしアイデア出しとか困ってるなら、私も手伝うから___」


ふと、スマホの向こうで乙葉がクスクスと笑っている事に気づいた。

首を傾げる。


「…乙葉?」


『ふふ、ごめん!実はアタシさ、良い方法を思いついたんだよね~』


「…え?」


『上手くいったら麻希にも教えてあげる!それじゃあ今から長編小説書いてくるから、またね!』


乙葉はそう言って通話を切った。

通話終了の音がピロンと鳴り、私は呆気に取られる。