あなたの小説を売ってください


「プロットはできてるんでしょ?なら後は登場人物を増やすとか…イベントを増やすのが一番いいんじゃないかな」


「そうなんだけど、それだと一ヶ月じゃ足りないの…それに短編も何作か書いて稼いでおきたいし」


「稼ぐって…」


「だって一回に一ヶ月もかかるんだよ?書く小説をもっと量産すればそれだけお金も貰えるし、その方が絶対いいでしょ?」


その発言に言葉を失う。

…もう、お金の事しか頭にないんだ。

その事実が悲しかった。

乙葉は今、小説を書いていて楽しいだろうか。

私の曇った表情に気づく事なく乙葉がノートにペンを走らせ、すぐに止めた。


「長編だとお金どのくらい貰えるんだろうね~、あぁもう…スゴい気になる!良い方法ないかなぁ」


すぐそばにいる乙葉の背中が遠く感じる。

最後に目を合わせて会話したのは…いつだったっけ?

話していても、ちっとも面白くない。

今の乙葉は…やっぱり、苦手。

ふと教室のスピーカーから音が鳴り、中休みが終わる。

ちょうど入ってきた先生が「席につけ」と声を発した。

慌てて席に戻り、前の席にいる乙葉の後ろ姿を見つめる。

よし…決めた。

次で最後。

乙葉が次に小説買取人に会ったら…それが終わったらちゃんと言おう。

もうこんな事はやめようって。

小説買取人には、もう会わないでって…自分の気持ちをちゃんと伝えよう。