あなたの小説を売ってください


がさがさと袋が擦れる音がする。

本屋さんを出た頃には辺りはすっかりオレンジ色に染まっていて、カラスの泣き声が耳に響いた。


「あぁ~、買った買った!お金を気にせず仕えるって楽しい!ねっ、麻希!」


「うん、そうだね…」


大量の袋を両手に持ち、私の前を歩く乙葉。

そのご機嫌な様子を見て小さくその背中に問いかける。


「ねぇ乙葉…」


「ん?なーに?」


「………」


___小説買取人とはもう会わないで。


そう言うつもりだった。

だけど…。

振り返った乙葉の嬉しそうな顔を見て、私は用意していた言葉をグッと飲み込んだ。

その代わり、こんな言葉を投げかけてみる。


「次の…のべりぃに投稿する作品、どうする?」


作った笑顔のぎこちなさに、乙葉は気づかない。

せめてまた、前みたいにお互いの小説を見せ合いたかった。


「あー、そうだなぁ…」


乙葉は人差し指をアゴにあてて空に視線を向けた。

そして少ししてから申し訳なさそうに眉を寄せて私を見る。


「ごめん、しばらくは投稿できないかも」


それは小説買取人に渡す小説を書くからだろうか。

私はこみ上げてくる感情を押し殺して笑う。


「そっか、残念」


心の穴が、少し広がったような気がした。


***