あなたの小説を売ってください


いつか私が書いた作品も、こんな風に…。

きっとのべりぃに投稿している作家さんの多くが夢見ている書籍化。

私も…そして乙葉もそんな夢に胸を躍らせていた。

そのはずなのに。


「あっ、このノートのページ数多い!今度は中編小説を買い取ってもらおうかなぁ~」


小説が並んだ棚の近くに、小さく設置された文房具のコーナー。

そこで分厚いノートのパッケージを眺める乙葉の買い物カゴには、圧倒的に小説よりノートが多い。

その光景を見て小さく開いた口から、吐息がもれた。

…まるで心に小さな穴が開いたみたい。

風船みたいにしぼんでいくような感覚に、私は首を振った。

目の前の文庫本を一つ手に取り、カゴに入れる。

今の乙葉は、なんだか…少し苦手。

少し前までは純粋に小説を書くのが楽しくて書いていたのに…今の乙葉の目的は完全にお金だ。

手元のカゴの中身へ視線を落とす。

山積みになった小説。

お金があるからこそできる買い物の仕方。

目についた新作や気になっていた小説を、値段を気にせずカゴに入れるやり方。


「…お金がなかった時はどうやって選んでたっけ」


私の呟きが乙葉に聞こえる事はなかった。