あなたの小説を売ってください


学校に着き、午前の授業が終わっていく。

お昼休みがきて、いつもより少し高いパンを購買で買って乙葉と中庭のベンチに座った。

乙葉のお弁当は相変わらず美味しそうなラインナップで、私は隣でツバを飲み込む。

玉子焼きにウィンナー、唐揚げにきんぴらごぼう。

うちはお母さんの仕事が朝早く始まるから、お弁当は遠慮しているんだけど…やっぱりお弁当って魅了的だよね。

私はフツフツとわき上がる羨ましさを抑えながら、購入したサンドイッチにかじりついた。


「麻希、帰りはどこの本屋に行く?」


箸で上手にウィンナーをつまみながら乙葉が小首を傾げる。


「うーん…駅前の本屋さんが品揃えいいよね、大きいし」


「いいね!あそこなら並列してCDも売ってるし、近くに洋服も雑貨屋もあるし…あ、ついでにおいしい物も食べに行こうよ!」


ズラリと浮かぶ目的地の候補。

本当に今日で十万円分を使い切ろうとしているんだと思いながら、私は咀嚼(そしゃく)したサンドイッチを飲み込み乙葉を見た。


「乙葉、買う気満々だね」


「そりゃあ、あるうちに使っとかないと…それに」


そこで言葉が区切られる。

乙葉が箸を置き、スマホの画面を私に見せた。

彼女はニヤッと笑みを浮かべてこう告げる。


「“次”への意欲を高めておかないとじゃん?」


表示された見覚えのある画面に、私は絶句した。

乙葉のスマホに映っていたのは、紛れもない“小説買取人”のサイトだったから。

手元のサンドイッチがボトッと太ももの上に落ちる。

水分を含んだトマトの湿気が布越しに伝わり気持ちが悪い。