図書室に着くと、わたしたちは「魔法生物」というカテゴリーの棚へ向かう。
人魚、人魚……あった!
そのまま「人魚について」という本があった。
……すごく高いところに。
「……とってやるよ」
「ありがとう……」
「人魚について」という本は、それはそれは分厚い本だった。
正直読む気すら起きない。
「これ、読むのか……」
思わずため息まじりにわたしは言う。
すると、ロウくんはあせったように返した。
「いや、読めよ! 頼むから! お前も留年したくないんだろ!?」
あ、そうだった。わたしには留年がかかってるし、ロウくんには刑期がかかってるんだった。
「でも、こんな分厚い本読みたくないよ。これ読んでたら夏休み終わっちゃうよ」
しかしわたしのめんどくさいモードが入るともうとまらない。
自分から調べようなんて言っといてなんだけど、とにかく文字を読むのがダメ。
留年がかかっててもそんな調子の自分に思わず笑ってしまう。あはは。
「じゃあ、オレが読むから!」
そう言ってロウくんは本をわたしからひったくった。
わたしたちは図書室の席につく。
「いいか? 別にこんな分厚い本、全部読む必要なんてないんだよ。最初に目次があるだろ? まずはそこから関係しそうなところを読んでいくんだ。全部読むのはそのあとでいい」
「なるほど……!」
いらいらしたように話すロウくんに、わたしは素直に関心する。
ロウくん、意外と優等生タイプだな。それも要領のいいタイプ。
ぺらぺらと本をめくるロウくんをただ見つめる時間が流れる。
ロウくんって、意外と美形だ。
まつげは長いし、目は思ったより大きくて少したれ目。鼻も高いし、唇は薄くて小さい。
「なるほどな」
ロウくんは本を閉じた。
「え!? もうわかったの!?」
するとロウくんは首を振る。
「いや、この本からわかることは、『人魚は澄んだきれいな海にしか生息しない』ということだけだ。さすがに校長も日本国内で完結する課題を出すだろうから、日本で綺麗な海を手当たり次第に当たるしかない」
「ええ!? めんどくさ!」
「お前な……留年したくないんだろ?」
「そ、そうだけど……」
留年したくないけどめんどくさいと感じてしまうようなところが、今のわたしの事態を生んでるんだよね。うん、自己分析ばっちり。
「さすがにもう少し調べようよ。そうだ、魔法生物学の先生に聞いてみよう! 何も調べずに聞いたら教えてくれないだろうけど、一度本で調べたんだから、ちょっとはヒントをくれるでしょ!」
「調べたのはオレだけどな……。大体、お前、先生に相手してもらえるのか? さっき、最低最悪の生徒って聞こえたぞ」
聞こえてたのか……。
「大丈夫。わたし、ごまするのは上手だから」
わたしは手でごまをする動作をしながら、魔法生物学の教室に向かった。
魔法生物学の教室は、さすがに授業をしているので場所はわかる。
ロウくんは後ろでため息をついていた。


