あの夏、君だけを見ていた

「俺と教習所で毎日会ってるじゃん」
「こないだ、帰りも一緒になったし」

……ねえ、彼氏のことしか見えてない紬ちゃん。

「うーん、ごめん。意識してない」

ほら。俺のことなんか、眼中に無い。

「……なんでやねんっ!」
普通の顔して答えられる自信が無くて、大袈裟にコケてみせる。
「もっと真面目に考えてよ〜」
「何したら俺のこと気になってくれるかな〜」

真剣に話してるのに、紬ちゃんは大笑いしてた。

「ごめん、分かんないや」

「彼氏いる子には、俺の気持ちなんて分かんないよね」

「えーごめん」

「ほんとに悪いと思ってるならさ、この卵焼きちょうだい」
ヤケクソでお弁当の卵焼きを指さす。

「え、いいよ」
お弁当箱を差し出してくれる。

「なにこれ、うっま」

……まじで、びっくりするほど美味かった。

「嬉しい。ありがと」

「……これいつでも食べれる彼氏、羨ましいな」

つい本音が出た。
……卵焼きだけじゃなくて、全部。