すき、きらい、キス。

自転車を押して駅までの道を歩いていると、電車通学の和佳奈が唐突にそんなことを言ってきた。


「ちょ……和佳奈まで夫婦とか言わないでよ」

「いやー、だって。二人の会話聞いてたら、夫婦漫才にしか聞こえないんだもん」

「漫才のつもりは一切ないんだけど!?」


他の子達にはにこやかに話すくせして、わたしにだけは性格や口の悪さを隠そうとしない。

かく言うわたしも言葉遣いがいいとは言い難く、余裕綽々な様子で煽られると全力で噛みついてしまう。

……そんな血で血を洗うようなやり取りの、どこが夫婦だって言うんだ。


「明日から10月だから、やっと離れられる」

「こーやん、月が変わったらすぐに席替えしてくれるもんね」

「こーやん様々だよ」


こーやんやらマーシーやら、うちの学年は先生にあだ名をつけすぎだと思う。

とはいえ、30歳をいくつか過ぎた小林先生は普段テキトーなくせして席替えだけはちゃんとしてくれるから、みんなからは親しみも込めつつ『座席リセマラのこーやん』などと呼ばれてる。

……それもそれでどうなんだって感じだけど。なんだかんだ人気があるのは間違いない。うん。


「次の席替えでは月城と離れますように! ついでに、窓側一番後ろだと嬉しいなぁ」

「その希望、優先順位は月城が先なんだね」