ログイン中の亡霊

「よし!! やっとバイト終わった!! 帰ろ!!」

夜の街に、明るい声が響く。

彼女の名前は、雨宮幽乃。
綺麗な黒髪をポニーテールでまとめた、美人顔の女の子だ。

「今日は何投稿しよっかな〜」

スマホを片手に、ぼんやり横断歩道を渡る。

その瞬間。

――ブブーーッ!!!

右側から、耳を裂くようなクラクションが鳴った。

「……え?」

気づいた時には、道路に倒れている“自分”が見えていた。

「あれっ!? 私……え、待って待って、嘘でしょ……?」

数秒遅れて、状況を理解する。

「死んじゃったの……?」

軽くパニックになる幽乃。
けれど彼女は、驚くほど立ち直りが早かった。

「……まあ、しょーがない!! 私がぼーっとしてたの悪いしね!!!」

そう言って、無理やり笑う。

「あーあ。でも最後に美味しいもの食べたかったな〜……」

ふわふわと浮かびながら、幽乃は小さくため息をついた。

「……てか私、なんで浮いてるの!?!?
もしかして幽霊になっちゃった!?!?」

幽乃は考え込んだ。

「んー……なんか幽霊でも食べれたり使えたりする物って無いのかなー」

幽乃はそう呟きながら、道路に落ちた自分のスマホへ手を伸ばす。

どうせすり抜ける。
そう思っていた。

――けれど。

「……え?」

指先に、確かな感触があった。

「え!?!? 触れた!!!」

幽乃は勢いよくスマホを持ち上げる。

画面には、見慣れたSNSのホーム画面。

通知が、いくつも溜まっていた。

お母さん
『今日バイト何時まで?』

友達
『てか明日の課題やった?』

バイト先
『今日はありがと〜!』

「……うわ、なんか普通だ」

ついさっきまで、自分が“生きていた”証拠。

その時。

遠くから、救急車のサイレンが近づいてくる。

気づけば事故現場の周りには、人だかりができていた。

「うわ……事故だって」

「まだ高校生くらいじゃない?」

「かわいそう……」

その言葉に、幽乃はゆっくり振り返る。

白い布をかけられそうになっているのは。

――自分だった。

「……あ。」

その瞬間。

今までふわふわしていた現実が、一気に重くなる。

「……ほんとに、死んだんだ」