初夜で狸寝入りする妻は異世界の記憶があるらしい

 幸せな夢でも見ているのか、なんとも締まりのない顔をしている。
 もしかしたら、夢で美味しいデザートでも食べているのかもしれない。その光景が容易に想像できる。
 妻の寝顔をしげしげと見つめていると、不意に彼女の唇が開いた。

「うう、ベルトラン様……ごめんなさい……」
「!?」

 驚きのあまり呼吸を止める。
 だが、どれだけ待っても、すうすうという吐息しか聞こえてこない。

(──なんだ、寝言か)

 ほっとしたような、残念のような。
 ベルトランが肩から力を抜いていると、再びエリアナの唇から断片的に言葉が発せられる。

「しま……す……おね、が……」
「…………」
「……ような……悪妻には、ならないと誓います。ですから処刑ではなく、せめて修道院へ……! どうかご慈悲を……っ」

 身が張り裂けそうなほどの懇願に、ベルトランはたじろいだ。

(彼女は何を言っているんだ? 処刑……?)

 片手で口元を覆いながら、エリアナを凝視する。