初夜で狸寝入りする妻は異世界の記憶があるらしい

 少し悩んだが、ベルトランは考えることを早々に諦めた。エリアナが口を閉ざしている以上、無理に聞き出すのは紳士的振る舞いではない。
 エリアナが温めた寝台の中に身を滑り込ませ、目をつぶる。
 忘れていた疲労感がどっと押し寄せ、そのまま泥のように眠った。

 ◇◇◇

 ベルトランが婚約の打診をしたとき、エリアナは十九歳だった。
 行き遅れと揶揄される年齢だったが、家柄や派閥、人柄を加味した結果、侯爵家に迎え入れることにしたのだ。
 エリアナに婚約者がいなかった理由は、王都で流行っている婚約破棄騒動に彼女も巻き込まれたからである。真実の愛という言葉を盾に、あろうことか公衆の面前で、男性側が一方的に婚約破棄を宣言するというものだ。まったくもって理解に苦しむ。

 そして、エリアナの婚約は白紙になった。彼女自身に非がないにもかかわらず。

 ベルトランは両親の急逝により二十歳で家督を継いだため、領地経営が安定するまで結婚を考える余裕はなかった。