初夜で狸寝入りする妻は異世界の記憶があるらしい

「当然だろう? 君は僕の妻なのだから。その時点で特別な存在なんだ。僕は社交的なほうだが、誰にでも同じ笑みを向けるわけじゃない」

 エリアナは顔どころか耳まで真っ赤に染め、目を潤ませた。

「参ったな……泣かせたいわけじゃないんだが。僕は、君にとびきり優しくしたい。君の笑顔が見たい。ただ、それだけなんだ」
「え」
「運命の恋をするなら君がいい。他の誰かなんていらない。エリアナだけを生涯愛する。今回は君との未来のために少々強引な手を使ったが、……嫌われてしまっただろうか?」

 長い沈黙を経て、エリアナはふるふると首を横に振る。

「そんなわけ……ないじゃないですか。ベルトラン様は態度がおかしい妻でも、黙って見守ってくださる器の大きい方です。優しく気遣ってくださり、わたくしのために心を尽くしてくれました。不満など、どこにありましょうか」
「エリアナ。僕を幸せにするも不幸にするも──すべては君次第だよ。君の心を教えてほしい。僕と離れて生きていくのが君の望みなのか?」

 できるだけ落ち着いた口調を心がけたが、内心は気が気でなかった。