初夜で狸寝入りする妻は異世界の記憶があるらしい

「アレグリア侯爵家所有の公園地下に封印された、神話時代の悪魔だが……。王家と大聖堂の協力を得て、秘密裏に処理した。悪魔が完全に消滅したことは僕も見届けた。よって、君が禁忌を犯す可能性は消えた。ちなみに、ミリアムは既婚者だ。遠い領地で温和な男のもとに嫁ぎ、仲睦まじく暮らしている。……つまり、彼女が僕の妻になることなど未来永劫、訪れない」

 淡々と事実を告げる。
 エリアナは意味がわからないとばかりに、声を荒らげる。

「えっ、で、でも……ヒロインはベルトラン様と結ばれる運命なんですよ!?」
「エリアナ。落ち着くんだ。息を吸って、僕を見て」
「…………」
「ここは君のよく知る世界なのだろう。未来予知できる君が、ミリアムの存在を無視できないのも無理はない。しかし、僕の妻は君だけだ」
「ですが、ベルトラン様。ヒロインに出会えば、あなたはヒロインを愛さずにはいられないんです。そういうストーリーですから。たとえ今はよくても、わたくしを娶ったことを後悔されるはず。その前に離縁すれば、赤の他人に戻るだけです」