初夜で狸寝入りする妻は異世界の記憶があるらしい

 悪魔との契約は、最大の禁忌だ。

 王国が建国するよりもはるか昔、アレグリア侯爵家が所有する公園の地下に、神話時代の悪魔が封印された。それをうっかり解いてしまうのがエリアナらしい。彼女は異空間で悪魔と体を交え、死後は自分の魂を悪魔に売る契約を結ぶ。

 その代わりに、老いることのない体を手に入れる。

 だが、自分の美貌を永遠のものにするという願いは、浄化の魔法を持つヒロインによって打ち砕かれる。悪魔の加護がある──それはエリアナがすでに人間ではない証しだ。悪魔はその場で浄化され、禁忌を犯したエリアナは公開処刑される。
 ヒロインは大聖堂から聖女であると認定され、彼女の望みでベルトランの花嫁になる。大団円を迎え、物語はそこで終わる。

(王国周辺は昔から争いが絶えず、併合や独立を繰り返してきたという。封印された悪魔の記録が途絶えたのもそのせいだろう。……エリアナが口を噤むのも無理はない。こんな眉唾物の話、誰も聞く耳すら持たないだろう)

 エリアナの孤独を思うと、胸が苦しい。